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今回のテーマは、「書籍 “ なぜ人と組織は変われないのか ” が教える自己変革の方法」です。
ハーバード大学教授のロバート・キーガンとリサ・ラスコウ・レイヒーハの2人が執筆したこの書籍。「変革を拒む人間の自己改革方法」について解説されており、世界的ベストセラーになりました。今回は、この本のエッセンスを組織の変革にどう生かしていくかについて、お伝えします。
この本の最大のテーマは「どのように対処すれば人と組織が変わっていくのか」です。
あなたは「なぜうちの会社は変われないのか?」と思うことはありませんか。それについて筆者は、会社が変革できない理由について「人には変革を拒む免疫機能が備わっているから」と述べています。
変化を拒む免疫機能には、
・技術的な課題に対する免疫
・精神的な課題に対する免疫
この2種類があるそうです。
例えば、技術的な課題に対する免疫とは「優秀なマネジャーになりたいけれど、マネジメント技術がない」のように、望む変化に対して技術不足だと自ら判断し、変化を拒むことです。精神的な課題に対する免疫とは「優秀なマネジャーになりたいけれど、なれるか不安」など、望む変化に対して気持ちが追いつかず、変化を拒むことです。
自分自身は変わることを強く望んでも、なんらかの理由を付けて動きを止める免疫機能が人間には備わっている、と筆者は語ります。
技術的な課題は、トレーニングすることで解決できますが、精神的な課題の克服には時間と努力が必要です。そこで筆者は、精神的な課題を解決するための「免疫マップ」を開発しました。
免疫マップとは、以下4つの視点を基に自分を解放していくメソッドです。
①改善目標
②阻害行動
③裏の目標
④強力な固定概念
この4つを書き出すことで、自己分析を行ないます。免疫マップに自分自身をさらけ出し、なぜ変われないのかを理解すると、変革への第一歩が踏み出せるのです。早速、免疫マップの各項目を解説していきましょう。
➀改善目標
改善目標とは、現状に対して「ここをこうしたい」という変化を望むことです。例えば、「しっかりマネジメントできる人間になりたい」と改善目標を立てます。そして、目標達成すべくマネジメントにかける時間を十分に確保するためには、権限委譲が必要だと考えます。しかし、実際に権限委譲してみると様々な理由で、うまくいかないことがあるのです。それが「阻害行動」と呼ばれるものです。
②阻害行動
阻害行動とは、変化や変革に対する不安の現れから、目的達成とは逆の「目的を阻害するような行動」をとってしまうことです。例えば、部下に権限委譲したものの不具合があると不安になって早々に仕事を取り上げてしまったり、お客さんに迷惑をかけたくないと心配して、結局自分が手を出してしまったり。
結果的に自ら仕事を抱え込み、権限委譲できないケースがあります。つまり、不安や心配が大きいばかりに権限委譲を自ら阻害してしまっているのです。
③裏の目標
人間は阻害行動をなかなか克服できません。なぜなら、阻害行動には「裏の目標」という強力な動機があるからです。権限委譲したいのに自ら仕事を取り上げてしまう阻害行動の裏には「絶対に失敗したくない」という恐怖心があります。これが裏の目標です。
また、部下に仕事を任せて自分の手が空いていたら、偉そうなリーダーだと思われるのではないか? 仕事を取り上げて自分が解決できたらカッコいいのでは? という気持ちもあるかもしれません。それらも全て裏の目標です。
④強力な固定概念
裏の目標の根本には、強力な固定概念があります。目標への阻害行動を解消するためには、まず裏の目標に気づき、その基盤である自分の固定概念にまでたどり着く必要があるのです。
これら4つの視点を免疫マップにさらけ出すと、改善目標を妨げている要因を客観的に見つめられます。これは個人と組織、両方に活用できます。
組織の変化が難しいのも「変化が起きたら自分の仕事がなくなるのではないか?」「自分に対する扱いが変わるのではないか?」など、社員一人ひとりに裏の目標があるからです。“それぞれの裏の目標から固定概念を洗い出し、解放することで会社は変わる”と筆者は述べています。
私はこの本の中で、とくに気に入っている箇所があります。組織が変化する過程でのリーダーの役割について「リーダーは常に、大人になっても人は成長できるという前提をもつ」という部分です。つまり変革の最中でも、リーダーは暖かい目で会社やスタッフを見ることが大切だということです。
それを踏まえ、リーダーにとって必要なことは以下3つが挙げられます。
・適切な学習方法を採用する
・変化をやみくもに強要しない
・免疫マップを活用し、ゆっくり固定概念を外すプロセスを学ぶ
大切なのは、いずれも急がず長期的な視点で取り組むことです。
あなたが組織の変化を成功させたいのであれば、まずは年単位で取り組むことを覚悟しましょう。
先日、ブレインマークスが行なっている無料相談会を私が担当しました。3ヶ月で組織を変えたいと相談を受けましたが、それは困難です。3ヶ月では表面上しか変わりません。もし本当に変わりたいのであれば、最低でも1年、できれば3~5年かけるつもりでないと本当の変革は起こりません。
ブレインマークスには、5~10年お付き合いしているクライアントもいます。変化の重要性、難しさ、時間がかかることを理解されているため、皆さんゆとりを持って構えていらっしゃいます。変化には長い時間が必要だということを、まず覚悟しておいてください。
さらに変化に必要なのは、社員のチャレンジを応援する職場環境です。間違えたら責められる、うまくいかなかったら居場所がなくなる、このような環境では社員も消極的になってしまいます。
自己変革に挑み、ミスしてもチャレンジが認められる職場であれば、思いっきり行動できるはずです。社員の挑戦を後押しする環境をつくらないと、組織の変化は起こりにくいでしょう。ブレインマークスも、自己成長を応援できる企業文化をつくろうと、日々努力しています。
技術的な変化は時間をかけなくても可能ですが、精神的な変化は長期視点が必要です。経営者は辛抱強く変化にアプローチし、社員が挑戦しやすい環境づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。みなさんの会社が技術的な変革ばかり追いかけていないか、精神的な改革には何が必要なのか、見つめ直すきっかけとして是非この本を生かしてみてください。