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今回は「社員の『会社への愛着』が必要かどうか」についてお伝えします。経営者ならば、社員に対して「会社に愛着をもってほしい」と考えることが自然ではないでしょうか。
しかし、「社員からの愛着」を生み出すために具体的に動いている経営者は意外と少ないです。「愛着」は欲しいと思いつつも、「どれくらい経営に重要なのかが正直わからない。
だからコミットしきれない」。多くの経営者の本音ではないでしょうか。私も経営者になりたての頃は、そんな日々を送っていました。そこで今回は改めて「社員の『会社への愛着』」について考えたいと思います。本コラムでは、以下2つのパターンについて解説しています。
「愛着があれば、どんなメリットがあるのか」
「愛着がなければ、どのようなことが起こるのか」
それぞれの利点やリスクを見ていきましょう。
現在の私は「社員の愛着があるかないか」によって、会社の経営が大きく左右されると思っています。つい先日も、それを実感することがありました。それは、求人関係の取引先Aとの間で起こりました。実は以前から、A社に対しては不穏な気配を感じていたのです。それは以下のような状態が続いていたためです。
①A社は当時、短期間での離職者が多かった
弊社も中小企業ですので、離職のような社内の「変動」が一定あることは理解できます。ただ、A社の場合は常軌を逸していました。A社とは3ヶ月程度の関係でしたが、その間「社員の離職により担当者が複数回変わっていた」のです。
②サービス品質の低下
度重なる担当者変更と同時に、顧客対応などサービス品質もみるみる低下していきました。「弊社を本当に『顧客』として扱って下さっているのだろうか?」と思わされるほど、対応の遅さなど仕事の粗が目立つようになったのです。この現象は、当時A社との窓口担当だった弊社社員が言いにくそうに私に報告したことから発覚しました。
いよいよ対応の悪さが許容範囲を超えたとき、経営者である私自身が、品質改善のためA社へ「担当者の変更」を要請することとなりました。A社からは詫び状の送付や、管理責任者からの謝罪を頂いたものの、品質が改善されることはありませんでした。
すると今度は、新しいA社担当者の方から契約解除を望んでいるとしか思えないくらいのさらに荒い対応を受けたのです。顧客との信頼を構築し、企業ブランドを確立する行為とは真逆の行動です。後から判明しましたが、その方も当時既にA社退職を決めていたとのこと。またA社自体もコロナ禍でニーズ自体は増え、「かなりの人手不足」という大変お忙しい状況ではあったそうです。
しかしながら、そういった背景を抜きにして一般的な中小企業に置き換えてみても、社内で「ロイヤリティの低い社員」、つまり「会社に対してあまり良い思いをもっていない社員」は、顧客に対して、同様の感情をあらわにしてしまうという結果は変わらないのではないでしょうか。ここに、愛着(ロイヤリティ)の重要性が現れています。
例に挙げたように、ロイヤリティの低下と「サービス品質の低下」は全く関係のないものではありません。顧客対応におけるサービス品質の低下は、以下2つのようなケースが引き起こすと考えられます。
①「退職リスク」により、ころころと人が入れ替わる
先ほど、離職のような流動性は中小企業にありがちなこととお伝えしました。しかしながら「毎回のように新人が0から顧客対応をする」といった状況では、商品・サービスの品質維持を期待することはできません。
②「ロイヤリティのない社員」による顧客対応
今回ご紹介したA社さんのケースです。ロイヤリティをもたないA社担当者は、弊社に契約解除を考えさせるほどの業務態度となってしまいました。こういったリスクを避けるため、経営者は「狙ってでも」社員が愛着をもてるような会社づくりをする必要性があるように思うのです。
「自分が大切にされている」と実感するからこそ、社員は会社に尽くしてくれる経営者自身が社員のことを大切に思っています」というメッセージを発さなければ、社員から「会社を大切に思っています」という思いをもってもらえない、ひいては自発的に社内外で発信してはもらえないのではないでしょうか。
会社が全く社員のことを大切に扱っていないのに、「私は自分の会社が大好きです」と表明する社員が現れるでしょうか?「自分は、所属企業から大切にされている」という実感があるからこそ、「こちらからも、所属企業に対して熱心に働きかけよう」と思ってくれるのではないでしょうか。
これは「社員を甘やかそう」と言っているわけではありません。社員が正しく仕事にコミットするためにはロイヤリティが必要だとお伝えしているのです。たかが愛着、されど愛着。人の気持ちは正直です。自分が大事にされていないと思うのならば、自らも会社を大事にするはずがありません。
だからこそ、社員のロイヤリティを高めるために、経営者は積極的に会社づくりに取り組み、働きかけていく必要があるのです。愛着は自然と生まれるものではありません。この考え方を少し変えるだけで会社の質、ひいてはサービス品質に好影響を与えるはずです。