コンサルティング
今回のブログでは、マネジャーにとって最も大事な仕事とは何かを検討します。経営者にとって、すべての従業員が大切なのはもちろんですが、特に重要な役割を果たすのがマネジャーです。彼らは経営者に代わって、現場で起こるさまざまな出来事に対して判断を下し、適切な対応を行います。
マネジャーが信頼を受けて任されるからこそ、経営者は自身の役割に集中できるのです。マネジャーの判断や行動が会社の成長につながることが重要であり、それがなければ意味がありません。
マネジャーの役割についての認識は人それぞれですが、会社の成長に貢献していなければ、その役割を果たしているとは言えません。従業員のやりがいは目標の達成や成果の創出に密接に関わり、最終的には会社の成長にも影響します。
今回は従業員のやりがいとマネジャーの役割について、具体的なレポートを通じて考察します。
まずは、従業員のやりがいについて見ていきましょう。レポートによると、仕事にやりがいを感じている従業員は多くありません。
下図はエン・ジャパンが運営する『エン転職』が行なった「仕事のやりがい」についてのアンケート調査からの抜粋です。
転職希望者約8,000人に「仕事のやりがいを感じていますか?」と聞いています。
上記の調査では、転職希望者の約48%が「自分の仕事にやりがいを感じていない」と回答しています。
やりがいがなければ、会社にいる意味どころか、働く意味すら見失ってしまうのではないでしょうか。
上記の調査結果から、転職を希望することとやりがいの有無は相関関係があると考えるのが妥当でしょう。
やりがいは離職率にも大きく関わってくる非常に重要な問題なのです。
では一体、やりがいを感じる人と感じない人との差はどこにあるのでしょうか?多くの場合、キャリアの初期には仕事に対する強いモチベーションをもっていたはずです。それが一方では維持され、他方では減退してしまう、それはなぜなのでしょうか。
初期のモチベーションは、何らかの妨害に遭わない限り、維持されていたでしょう。ここに大きなヒントがあります。
仕事にやりがいを感じているなら、それに対してマネジャーは特別に働きかける必要はないのです。
マネジャーが動かなければならない場面とは、従業員のモチベーションを阻害する何らかの出来事が起こったときです。阻害要因を速やかに排除すること、それこそがマネジャーの役割と言えるでしょう。
マネジャーは部下たちを上から見ようとしていると、部下をコントロール下に置きがちです。すると、マネジャーは「阻害要因の排除」ではなく「取り調べ」に多くの時間を割くようになるのです。上から見るのではなくて、マネジャーは部下たちの中に入って、彼らと協働しながら同じ景色を見る意識をもつといいでしょう。抽象的ですが、この意識で大分違ってくるはずです。
英アストン大学マイケル・リケッタ教授の調査によると、仕事に対する満足度が高いと、パフォーマンスも高くなる傾向にあるといいます。
また、米国の世論調査会社ギャラップのある調査研究は、社員の満足度と組織、マネジャー、同僚、仕事への認識を基に、売り上げ、利益、顧客ロイヤルティ、社員の定着率などがわかると結論付けています。つまり、社員が仕事にやりがいを感じて幸せな状態にあれば、会社及びステークホルダーの具体的な利益になるということです。
経営者の成し遂げようとすることは、従業員の働きからしか生まれません。彼らが仕事に対して良好な認識と感情をもって臨み、幸せを感じながら働けなければより良いものは生まれないのです。彼らのパフォーマンスを最大化すること、これこそがマネジャーの仕事の核心なのだと思います。
(安東邦彦)