コンサルティング
今回は、急成長の企業経営における危険な落とし穴とその代償について考察してみましょう。
急成長している企業が、その過程で組織の拡大や利益の追求を優先させるあまり、モラルを見失ってしまうことがあります
経済的な成功や競争での勝利など、短期的な成功に魅力を感じる経営者ほど、従業員の幸福や組織全体の健全な発展といった長期的な価値を見落としやすいのです。
トップダウンのマネジメントモデルは成長スピードを加速させる反面、その代償として倫理観の欠如がついて回ります。組織全体が思考停止し、経営者の意向に盲従する危険性が潜んでいるのです。
経営者にとって、これはある意味では楽と言えるでしょう。
組織と従業員との価値観など合わせる必要はなく、思考停止させて人を動かせば儲かるのですから。
さらにこうした組織では、どんどん人が辞めてもダメージが少ない。事業は儲かっているので、代わりの人もすぐ見つかるのです。
ですが人材不足のこれからの時代、経営者だけが幸せになるやり方はもう通用しないと感じます。
一方で、ブレインマークスのように、従業員一人ひとりの価値観や個性を尊重し、組織全体でビジョンに基づいたマネジメントを行う場合、そのプロセスは時間を要するものの、より健全で持続可能な組織文化の構築が期待できます。
従業員が自らの仕事に対して意義を感じ、組織全体としてもより高い目標に向かって一丸となることができるからです。
今後の変化の激しいビジネス環境において、このような組織作りが競争力を維持し、持続的な成長を遂げる鍵となるでしょう。
将来的に人材不足が深刻化する中で、個々の組織は単なる利益追求だけでなく、倫理的なマネジメントがますます重要になります。
企業が持続的な成功を収めるためには、人材の大切さを理解し、価値観を共有する組織風土を築くことが不可欠です。
先に、急成長を遂げる企業がその過程でモラルを失いがちであると述べましたが、もちろん全てではありません、私がコンサルティングを行う中で出会った数百億円規模の利益を上げる成長企業の例もあります。
その企業では、社長自らがしっかりとマネジメントを行い、ビジョンを持ち続け、経営目的を見失わないこと、そして従業員との誠実なコミュニケーションを重んじています。
この一貫した姿勢が、企業の拡大と倫理観の維持を可能にしているのです。
この不正問題は、企業の運営方法や経営者の役割について深く反省させる事件です。
ここから得られる教訓をきちんと理解することで、企業は将来のリスクを避ける方法を見つけ、持続可能な成長への道を模索できるはずです。
(安東邦彦/第3回に続きます)