コンサルティング
今回のブログでは、「会社の強み」と「弱み」について考えてみたいと思います。両者は表裏一体の関係でもあります。
会社の強みとは、他社には真似できないその会社独自の特長です。技術力や商品力、安さや納期の早さなどがそれに当たるでしょう。
そうした突出した特長こそが、顧客が他のどこでもない、あなたの会社を選ぶ理由になる
わけです。
しかしながら、経営環境はいつまでも同じではありません。強みがいつまでも強みであるとは限らないのです。
先ほど、会社の強みと弱みは「表裏一体」と書きましたが、そのまま単純に表と裏ではありません。これまで市場のシェアの多くを占めていた技術が、外部環境の変化によって一気に陳腐化してしまうケースは過去に多々ありました。
ただ、いずれのケースでもその前兆はあったはずです。前兆に気づかないか、あるいは気づいていても現実から目を背けてしまうと、いずれ強みは弱みとなって企業の足を引っ張ることになるでしょう。
つまり問題となるのは、変化に直面した時、当該企業がどんな態度を取るのかなのです。
そこで今回は、実際の企業の強みが、時流の変化によってどのように弱みに変遷していったかを例に挙げて考えてみたいと思います。
最初に、強みが弱みに変わってしまった世界的企業の事例を一つ提示しましょう。
イーストマン・コダック(以下コダック)は、アメリカを本拠地とする世界最大の写真用品メーカーでした。「でした」と過去形で書いたのは、ご承知の通り倒産したからです。
1881年の創業で、倒産したのが2012年ですから、実に131年の歴史のある大企業が破たんしてしまったことになります。70年代以降、フィルムシェア90%、カメラシェア85%とアメリカ市場をほぼ独占していた企業が、なぜ倒産するに至ったのでしょうか。
微細加工研究所所長の湯之上隆氏は『The Economist』の記事「The last Kodak moment?」を参照して、コダックがうまくいかなかった理由を列挙しています。
先の表からは、「完璧主義」「自前主義」「企業城下町で反映し批判が耳に届かなかった」などの傾向が見えます。
皆さんも知っているように、現在ではスマホで使われる各種アプリはまずリリースして、不備があればその都度修正し、アップデートしていくのが当たり前のやり方になっていますよね。
しかしコダックはこのやり方を拒否しました。最初から完璧に、しかも自社で完結するようなやり方に固執し、その結果スピード感を喪失したのです。
他方、スコット・D・アンソニー氏は『Harvard Business Review』誌に「コダックはなぜ破綻したのか:4つの誤解と正しい教訓」という記事を投稿し、一般的に言われている破綻理由に一石を投じています。
以下が一般的な理由とアンソニー氏の意見の対比です。
つまり、「コダック社は、新しいデジカメ技術も市場での強力なポジションも、デジタル化への先見の明も持ち合わせていた」とアンソニー氏は言うのです。
コダックの破綻理由について色々あるにせよ、破綻した最大の原因は、いくら先見の明があっても自らに変化を起こせず、時代の流れに対応できなかったことではないでしょうか。
変化を恐れて躊躇する気持ちもわかります。しかし、そんな時は、「追われる者のほうが追う者よりも経営資源は豊富」ということを思い出してください。
もともと強みのある企業は、変化を決断すれば、変われる潜在力は他社より高いのです。本気で変わる覚悟、これが時流の変化を乗り越えるポイントになるはずです。
(安東邦彦)