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先日、こんな記事を目にしました。
(参照記事)朝日新聞DIGITALより転載
山口達也さん「恐ろしい、ようやく気づいた」アルコール依存症を語る
https://www.asahi.com/articles/ASR4D4GBPR44UTFL01Q.html
山口達也さん(アイドルグループTOKIOの元メンバー)は、過去に不祥事を起こしてグループを脱退しています。記事では過去の不祥事について謝罪したうえで、「40代になってからすべてにおいて自信をなくしていた」とし、仕事の忙しさや不眠からアルコール依存症に陥ってしまった経験について語っていました。
私が印象に残ったのは、この記事が転載されたYahoo!ニュースのコメント欄です。山口さんの経験談に対して、多くの中小企業経営者がコメントを残していたのです。
以下、一部を抜粋して紹介します。
“自分はアルコール依存症ではないけど、気持ちはすごくわかります。現在会社を経営しており、会社の業績も悪くなく(中略)でも、常に不安がつきまとい、足元がおぼつかない感覚があります。(中略)経営者仲間が同じようにアルコール依存症になったり、宗教にはまっていたり、占いに凝ったり、女性に依存したり”
“自分も零細企業を10年ちょっと経営してたからすごくわかります。(中略)そういえば自分の悩み事を相談とか考えたこともなくて、狂ったように見た目を派手にしまくってたな”
“社長や個人事業主だと全責任が自分にかかってくるのでプレッシャーやストレスがすごいですよね。かと言って他人の前で弱音を吐くわけにもいかず、相談しようにもサラリーマンの立場の方には苦労を理解してもらえない”
日頃はなかなか吐き出す先のない孤独感やストレスを抱えている経営者だからこそ、偶然のきっかけでたくさんのコメントが集まったのかもしれません。
経営者は何を支えにして心の平穏を保っていくべきなのでしょうか。改めて考えてみたいと思います。
私自身、コメント欄に書かれていた経営者の気持ちはとてもよく分かります。経営者にのしかかるプレッシャーやストレスは半端なものではありませんよね。
ストレスを抱えてお酒に依存したり、経営が面白くなくなって金を稼ぐことばかりに執心したり……。そんな経営者も実際にこの目で見てきました。
ストレス過多になると人間の行動は変わっていきます。やたらと散財してしまうのもそうかもしれません。
高級車を何台も所有したり、高級時計をコレクションしたり。もちろん中には車や時計が本当に好きな人もいると思いますが、経営者なら必ず所有しなければいけないわけではないはず。
こうした行動は言うなれば、プレッシャーやストレスからの逃避です。適切なストレス発散の域を超えて、経営者自身の健康や会社の財務に影響を与えるようになってしまえば、企業にとって良いはずはありません。
それでは、経営者の心を支えているものは何なのでしょうか。
私自身の場合は、「会社経営=自らの作品づくり」と捉えることが自らのバランスを保つことにつながっています。クライアントや社員が熱狂する作品がどうすればできるのかを考え、それを実践する喜びがプレッシャーに勝っているのです。
自分の人生と、会社という作品がリンクし、この作品をつくり上げれば自分の喜びにつながると考えられれば、多少の苦しさは乗り越えられるのではないでしょうか。
反対に、目の前の売り上げのことばかり考えていたり、何とか今月も乗り切らなければと焦っていたりする状況では、しんどさばかりが積み重なっていくと思います。自分の作品に対する夢や目標を見失っているから、日常が苦行になってしまうのです。
一流のアスリートは、ものすごく節制して苦しいトレーニングに耐え、目標に向かっていますよね。それは勝利や金メダルという夢があるからこそできるのでしょう。
では、記事に付いていたコメントにあったように、経営者は常に強くいなければならないのでしょうか。
私はそうは思いません。経営者だからといって強くなくてもいいし、いろいろな人に助けてもらえばいい。経営者が全然お金を持っていなくてもいいんです。
「他人の前で弱音を吐けない」「サラリーマンである社員にも相談できない」……そんなふうに思っているなら、今すぐにでも誰かに話を聞いてもらうべきかもしれません。
アスリートが優秀なコーチを求めるように、経営者にも優秀なコーチやカウンセラーが必要なのです。
(安東邦彦/第2回に続きます)