コンサルティング
中小企業経営者の中で、女性が活躍できる職場づくりを真剣に考え、実際にアクションを起こしている社長はどのくらいいるでしょうか。
女性活躍の推進に向け、大企業に「男女の賃金差異の開示」が義務づけられるようになった現在。大企業ならではの環境整備が進んでいくと考えられますが、一方では全国転勤の可能性など、女性の働きやすさを阻害する要因も残っています。
その意味では、中小企業にこそ優秀な女性を獲得できるチャンスがあるのです。
ブレインマークスでも、優秀な女性社員が会社の中心で活躍しています。すべての職種・職位で女性が活躍できるようにしたいと考えています。
しかし当然ながら、ただ待っているだけで中小企業に優秀な女性が来てくれるわけではありません。
女性が安心して飛び込める職場に、そして女性が活躍し続けられる環境にしていくためには何が必要なのでしょうか。
その鍵を握るのは、社長自身の意識の持ちようだと考えています。
女性が活躍できる環境を考えることは、すべての人が活躍できる環境を考えることでもあります。
体力面を考えれば個人差はさまざま。女性の働きやすさを考える上でも、残業を抑制する配慮はやはり必要でしょう。長時間労働が常態化しているあからさまなブラック企業では、女性に活躍してもらうのは厳しいかもしれません。
残業時間について率直に書くと、私自身はコロナ禍にあって、経営者の行動が社内におよぼす影響を改めて痛感しました。
2020年、世の中がコロナ禍に突入した当初は、「この先に何が起きるか分からない」という危機感に包まれた経営者が少なくなかったでしょう。私もそんな1人で、万が一会社が潰れたとしても後悔しないよう、自らのリミッターを切ってがむしゃらに働きました。
その結果、社員の残業時間も増えてしまったのです。「社長があんなに頑張っているんだから」という意識を持たせてしまったのかもしれません。
コロナ禍が長引くなか、私はこうした現状を見て社内全体の働くペースをダウンさせていきました。
互いの姿が見えやすい中小企業では、経営者の意識や行動が良くも悪くも伝播するのだと意識しておかなければいけません。
加えて、女性が活躍できる環境をつくる上では、セクハラ・パワハラにつながる発言や行動を防止するモラルの醸成が不可欠です。
この点についても、経営者の意識が問われるのではないでしょうか。
私自身が若い頃に勤めていた会社では、超ブラックな環境で長時間労働を続けていました。自分の能力が飛び抜けているわけではないことを理解していた私は、「人の3倍働く」つもりでやってきました。
そんな原体験を持つ私は、意識していなければつい「努力・根性型」の台詞を口にしてしまいそうになるのです。
「成果を出すために死ぬ気で働くのは当たり前だ」「男のくせに簡単に音を上げるんじゃない」……。そんな、昭和の時代の台詞です。
私はそうした素の自分を認識していますし、つい言葉にトゲが出そうになってしまうことも自覚しています。だからこそ、意識して言葉を選び、発言することを心がけています。
私と同年代であれば、近しい原体験や価値観を持つ人も多いのではないでしょうか。社長という立場になって、若い人につい厳しいことを言ってしまうことがあるかもしれません。
しかし考えてみてください。どんなに努力・根性型の台詞をぶつけたところで、社員が自分と同じように働けるわけではないのです。
スポーツの世界に例えれば、経営者が長年の経験を積み重ねてきたプロ選手なら、若手社員は駆け出しの新人選手です。
厳しい言葉を投げかけるよりも、駆け出しの人たちが夢中で働ける仕組みを作ったほうがいい。それが私のたどり着いた結論でした。
(安東邦彦/第3回に続きます)