コンサルティング
企業経営に絶対はありません。どんなところにリスクが潜んでいるか分からない……。そんな感覚は、多くの経営者が共有するところだと思います。
SNS全盛期の現在にあっては、企業規模や業態に関わらず、「社員の素行」一つでブランドイメージが大きく毀損されてしまうこともあります。
社員の犯罪行為の発覚は言わずもがな。近年では、社員の私生活における異性関係や、そこでの行動がSNS上で告発され、企業を巻き込んで炎上状態になることも。
そんな事態に陥ってしまえば、せっかく長い時間をかけて育ててきた事業やブランドのイメージが大きく低下してしまうことは避けられません。
事業の結果として低評価をつけられてしまうのではなく、社員個人の問題から企業そのものに低評価をつけられてしまう。これは経営者としては耐えがたいことだと思います。
しかし、採用活動の段階において、仕事以外の部分を含めた人間の本質を理解するのは極めて難しいのが現実です。何らかの問題を抱えた社員が入社する可能性はゼロではありません。
その前提に立ったとき、事業やブランドを守るために、経営者は何をするべきなのでしょうか。
「社員が引き起こす不祥事」という観点で見れば、世の中にはたくさんの事例があります。大企業や中央省庁に勤める人が問題を起こせば、メディアで大きく取り上げられることもあります。
一方、若いメンバーが多いスタートアップやベンチャーにも、こうした人材のリスクは常に付きまといます。社員のプライベートにおけるトラブルがTwitterなどで晒され、炎上してしまう事例も度々起きています。
炎上の渦中にある人物はどんな会社で働いているのか? その情報も晒されてしまい、立ち上げたばかりのサービス名が思わぬ形で、望まない形で広まってしまう危険性も。
その原因を作ってしまったのは、あくまでも社員個人です。社員個人に問題があることは否めません。しかし私は、経営者としてのモラル観が影響していることもまた、否定しきれないと思うのです。
特に若い世代の社長が率いる会社では、「会社としてどんなモラルを持った存在でありたいのか」を深く考え、社内へ発信していく必要があるのではないでしょうか。
私は起業前にITベンチャーの役員を務めた経験があります。
当時の職場を振り返ってみると、「個人による不祥事が起きてもおかしくない雰囲気」があったように思います。
会社は20代・30代のメンバーが中心で、みんな血気盛んでイケイケ。成果に向かって邁進するエネルギーに満ちあふれていた一方、道徳的なことを教える人は誰もいなくて、社内には「無茶なことをしているほうがかっこいい」と考える風潮さえありました。
堅苦しいことを言う大人がいないほうが、若い人にとっては面白い会社だと言えるのかもしれません。堅苦しいことを言う大人がいないからこそ伸びる事業もあるのかもしれません。
しかし経営者には「どんな文化の会社を作りたいか」という強い思いと信念が求められます。
どんな文化の会社を作りたいのか、そのためにはどんな人を船に乗せるべきなのか。事業を成長させるために誰彼構わず採用していれば問題が起きるリスクが高まりますし、経営者の思いや信念がなければ、モラルを大切にする風土は生まれないのです。
(安東邦彦/第2回に続きます)