コンサルティング
前回のブログでは、コロナ禍を経て顕著になっている転職者の転職理由の変化を紹介しました。
パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」の調査によれば、過去2年間、転職理由ランキングの第1位が「給与が低い・昇給が見込めない」となっているのです。
(参考記事)
転職理由ランキング、1位は「給与が低い・昇給が見込めない」
https://doda.jp/guide/reason/
物価高による生活不安が続く現在、これが転職理由のトップになるのは当然だと思います。実は私自身にも思い当たる経験があるのです。
私は、初めて勤めた会社を24歳のときに辞めました。理由は「30代の先輩たちがしょぼくれていたから」でした。
ある先輩社員は、高いスポーツカーを買って、そのローンを払うために週末は近所の飲食店でアルバイトをしていたのです。収入が足りなくても高級車を買ってしまうのは、バブル真っただ中のあの時代ならではかもしれませんが……。
若かった私は「こんな状況は許せない」と思いました。理由はどうあれ、必要な収入をまかなうためにアルバイトをしなければならない。こんな未来は嫌だと思ったのです。
当時の私が感じていたのは、目先の賃金というよりも、ロールモデルである身近な先輩の日常から感じる不安だったのでしょう。
当時の私のように、将来への不安を感じて転職を考える人が増えていることは間違いありません。
身近な先輩社員を見て希望が見出せなければ、今は転職先がいくらでも見つかる時代です。職種によっては、いつでもより良い条件の会社に移れるかもしれません。
これは逆も然り。仮に今現在の給料が安くても、将来に希望が持てれば社員は頑張ってくれる可能性があります。
一概には言えませんが、中小企業の場合は「金よりも夢」なのかもしれませんね。
とはいえ、現状の給料があまりにも安ければ、間近に迫る生活不安から転職してしまう社員が増えるばかりでしょう。中小企業経営者は、やはり賃上げと向きあっていかなければならないのです。
しかし、実際に多くの企業へコンサルティングを行っている私の感覚では、「賃金を上げたくない」と考える社長は非常に多いように思います。
これは人事制度策定に携わっていると如実に感じます。必要以上にシビアにコスト計算をしている企業、「これはさすがにケチだな」と思うような企業が多いのです。
とはいえ、社員も生活を抱えている1人の個人である限り、働く上でのモチベーションに給与が大きく影響することは間違いありません。
給与が安ければモチベーションは下がりやすくなり、給与が高ければモチベーションは上がりやすくなる。つまり給与を上げれば、人材マネジメントがより簡単になるということです。
中小企業経営者はぜひこの考え方を持つべきだと思います。「たくさんの給料を払うと損」なのではなく、「たくさん給料を払うことで人材マネジメントの負担が軽減する」と考えるべき。
長い目で見れば、これは大きな投資対効果となるはずです。採用活動にもプラスに働くかもしれません。
では、どの程度まで給料を上げるべきなのか。次回のブログでは、社員の賃上げニーズを探るためのコミュニケーションについて考えたいと思います。
(安東邦彦)