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コロナ禍を経て、転職者の転職理由に顕著な傾向が見られます。
パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」が2022年3月に発表した転職理由ランキングでは、第1位が「給与が低い・昇給が見込めない」となっていました。
(参考記事)
転職理由ランキング、1位は「給与が低い・昇給が見込めない」
https://doda.jp/guide/reason/
この結果は前年に続くものだとことです。そのさらに前年を振り返ると、コロナ以前(2020年1月~3月)の調査では「社内の雰囲気が悪い」が1位。
「給与が低い」という直接的な理由での転職が増えているのは、ここ3年間を象徴する変化と言えるのかもしれません。
コロナ禍での環境変化に加え、直近では物価高が家計を直撃しています。こうした状況で給料アップを求める人が増えるのは当然だと言えるでしょう。
とはいえ中小企業にとっては「ない袖は振れない」現状があるのも事実。経営者によっては賃上げそのものに否定的な意見もあるかもしれません。
世の賃上げニーズを、中小企業経営者はどのように捉えていくべきなのでしょうか。
物価高を背景にして、大企業では「インフレ手当」を支給する動きも盛んになっています。
帝国データバンクが2022年11月に調査したところでは、「予定・検討中」を含めて、調査対象のうち4社に1社がインフレ手当の支給に向けて動いているとのことです。
(参考)インフレ手当に関する企業の実態アンケート(帝国データバンク)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p221106.html
実際のケースを見てみると、支給額は数万円〜10万円程度。物価高に対応した一時金としての支給がほとんどです。
こうした取り組みによって従業員の短期的な収入アップへつなげることは、もちろん重要でしょう。ただしこれだけでは「将来的な不安」まで改善することはできません。
私自身は、給与が安いことを理由に転職する人が増えているのは当たり前の流れだと思っています。
その背景には、短期的な給与の安さへの不満だけでなく、長期的に給与が上がらないことへの不安があるのではないでしょうか。
これだけ物価が上がり、食品もガソリンもどんどん高くなっている中で、自分の勤め先に「賃金が上がる可能性がない」と思えば、恐怖感を覚えて当然でしょう。
そんな状態のところに、ビジネスチャンスとばかりに人材紹介会社はバンバンCMを流しています。結果、転職意欲をかき立てられた人は同業や同職種に転職していくことになります。
働く人が不安を抱えるのは当たり前。その現状認識を持った上で、中小企業が実行すべきは短期的な不満の解消だけでなく、長期的な不安への対応だと考えています。
次回のブログでより深掘りしてみたいと思います。
(安東邦彦/第2回に続きます)