コンサルティング
前回のブログでは、働き方改革の波のなかで高まり続ける副業トレンドについて書きました。
パーソル総合研究所の調査によれば、2021年時点で副業を全面容認している企業が23.7%、条件付き容認が31.3%となり、合わせて55%の企業が副業を容認しています。
一方、リクルートが2022年1月に実施した個人向け調査によると、過去に副業経験がなくても「今後副業を実施したい」と考えている人は40.9%に上っています。
もはや、副業を容認しない企業は働き手から選ばれなくなる時代になっているのかもしれません。
とはいえ中小企業経営者の多くは、こうした数字にリアリティを感じにくいのではないでしょうか。
「大企業なら副業を認めてあげられるかもしれないけど、中小企業では現実的に厳しいよ」
……そんな声が聞こえてきそうです。私自身、そうした意見に共感する部分も大いにあります。
はたして中小企業は、働き手のトレンド変化に対応できるのでしょうか。
そもそも中小企業と大企業では、組織の仕組みにも労働環境にも、そして確保している人材の層にも根本的な違いがあります。
そうした現状だけを考えるなら、私も中小企業の副業容認には無理があるのではないかと考える立場です。
大企業には知名度とブランド力があり、仕事は仕組み化されていて高い生産性を保っています(基本的には)。そのため、従業員一人ひとりの労働に対する負荷は低く、従業員の余力を副業に向けるよう働きかけることもできるでしょう。
しかし一般的な中小企業には知名度もブランド力もありません。生産性も高いとは言えず、一人の従業員がさまざまな役割を兼務していることも多いため、大企業で働く人と比べて仕事は大変です。
この状態の中小企業で働く人が、副業に向ける余力を持っていること自体おかしいとも言えますよね。
根本的なことを指摘するならば、中小企業が副業容認するにはまず、「高い生産性で正しく儲けられる事業」を作っていかなければならないのです。
私自身は、2つのことを同時に夢中になって追いかけることができない人間です。そのため会社員時代に「副業がしたい」と考えたことはありませんでした。
ただ、現在は大企業でも終身雇用の幻想が崩壊し、多くの人がキャリアの不安を抱える時代。今の仕事だけでなく、新しい分野でもスキルを得たいと考える人の気持ちはよく分かります。
働く人の幸せを真正面から考えるならば、本業に悪影響をもたらすことなく新たな経験や収入を得られる副業に取り組むことは、決して悪いことではないと思うのです。
事業そのものの構造を変えていくには時間がかかります。その前提を理解した上で、中小企業も大企業に近い形の働き方へ転換していくべきなのかもしれません。
次回はそんな「現実策」についても考えてみます。
(安東邦彦/第3回に続きます)