コンサルティング
今回のブログでは、「仕事を任せる」ことについて考えます。
仕事を任せる側にとっても、仕事を任される側にとっても、それが成長のチャンスである
ことは間違いありません。
上司から見ると、仕事を任せれば自身の手を空けられ、マネジメント本来の仕事に手を付けることができます。
また、部下からすると、仕事を任せられることで様々な経験を積むことができます。部下が仕事のスピードを速め、品質も高めることができるのは、仕事を任せるからこその結果だと言えます。
継続して仕事を任せていくことができれば、個人の成長に伴って、会社全体の成長にもつながります。仕事を任せることは極めて重要。これは多くの人が理解しているでしょう。
それにもかかわらず、部下に仕事を任せることを苦手とする上司は少なくありません。一方で、仕事を任せようにも頼りなく、任せることができないと感じさせる部下が存在するのも事実です。
仕事を任せられない上司、仕事を任せたくない部下には、それぞれどんな傾向があるのでしょうか。
最初に、上司が仕事を任せられない理由を確認しましょう。
仕事を任せることについては、経験豊富な専門家がそれぞれに意見を公表しているので、そのいくつかをご紹介します。
組織学習経営コンサルタントの池本克之氏によると、「部下に任せられない上司」には共通する4つの特徴があるそうです。池本氏が『ダイヤモンド・オンライン』に執筆した記事『「部下に任せられない上司」に共通する4つの特徴』から引用します。
上図の1や2はわかりやすいのですが、3や4はどういった意味合いなのでしょうか。
3については、こういうことです。社員はすでに自分の仕事を抱えています。その中で仕事を任せるのは、「忙しいだろうから悪いな」と遠慮してしまうのです。
つまり、どれだけ仕事が多くても我慢をして、自分が大変な思いをすれば済むという発想です。
しかし、自分が頑張ればそれでいいという考え方は、部下の成長を促さず、会社全体の成長も期待できません。
また、いくら経験を積んだ上司といえども、一人当たりの仕事の許容量はたかが知れています。無理をすれば心身の健康を損ねるかもしれません。会社にとっても戦力ダウンにつながってしまいます。
4の『「楽をしたい」と考えている』というのは、一見逆のように思えます。自分が楽をしたければ、任せればいいはずです。では、その真意は何なのでしょうか。
それは、部下に仕事を教える手間や時間を省きたい、というものです。教えたからといって、すぐにできるようにはならないのが常です。失敗すれば、フォローをしなくてはなりません。
そんな思いをするくらいなら、勝手を知っている自分でやったほうが楽であるということ。これでは、先ほどの3と同じく、個人にも組織にも成長をもたらしません。
次に紹介するのは、ジョンソン・エンド・ジョンソンやシェル石油など6社のグローバル企業で陣頭指揮を執った経験のある、新将命氏の著書『社長の教科書』からの抜粋です。
新氏によると、そもそも仕事を任せるつもりがない経営者や上司もいるそうです。その発想は次の5つです。
仕事を任せるつもりがない人は、任せたいけれども任せられない人よりも深刻です。その最たる考え方が、1の「任せることの重要性を認識していない」というものです。
新氏に言わせると、そうした人は自分が会社を去った後をイメージできていない人だといいます。
経営者でも上司でも、命は無限ではありません。人はいつか死ぬのです。それなのに、仕事を任せることを覚えないというのは、自分が去った後も会社に残る社員たちへの思いやりが欠けているということと同じなのです。
そうした振る舞いは、自分勝手だと思われても仕方がありません。自分が蓄えた知識、経験を後輩に残すことでこそ、会社は発展し続けていくことができるのです。
仕事を任せるということは、自分が生きた証を会社に残すことでもあるという、発想の転換も必要です。
最後に、組織・人事戦略コンサルタントの麻野進氏の著書『最高のリーダーが実践している「任せる技術」』から究極の質問を引用します。
「あなたは自分がリーダーとして、本来やるべき仕事や学びの時間に十分な時間を取れていますか?」
答えが「NO」であれば、どんな言い訳をしてみても、あなたは仕事を十分には任せきれておらず、自分本来の仕事を全うできていないということです。
まずはこの質問に真剣に答え、「NO」であれば、自分がどの任せられないタイプかを自覚することから始めてみてはいかがでしょうか。
(安東邦彦)