コンサルティング
従業員の高齢化という長期的な課題に加え、コロナ禍によってOJTの機会が減少しまっている昨今。スキル・技能の伝承が急務となる中小企業が増えているようです。
日本経済新聞(2022年8月31日)では、こうした状況を受けて「スマートフォンで撮影した技能実技動画に自動で字幕・翻訳を付ける」「商談の成功のコツをAIが分析する」など、スキル伝承を後押しするサービスが登場していることを取り上げていました。
この記事では、特に従業員数49人以下の中小企業においてスキル伝承が遅れていることも紹介されています。
現実に、ベテランのスキルやノウハウをどうやって次世代に伝えていけばいいのか悩んでいる経営者も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ブレインマークスが実践する人材育成手法をもとにして、スキル伝承の進め方を考えていきたいと思います。
そもそも、スキルの伝承とは何を意味するのでしょうか。スキルを受け継いで成果を出せる人材とは?
中小企業の経営者から寄せられる人材育成の相談では、大きく分けて2つの悩みがあると感じています。
それは「とてもカルチャーフィットしているけど成果を上げない人」か、「成果を上げるもののトラブルを起こしがちな人」についての悩みです。
成果と人間性を両立させている従業員がほとんどいないことで、多くの経営者がフラストレーションを抱えているのです。
こうした現状から、私は人材育成を2本柱で進めるべきだと考えています。成果を出すためのスキルと人間性、この2つを見ていかなければいけません。
「人間性の教育なんてできるのか?」
率直にそう感じる経営者も多いかもしれませんね。
人間性の教育は、基本的には会社の理念や価値観の共有をどれだけできるかにかかっています。これをおろそかにするから、スキル教育がうまくいかなくなってしまうのです。
成長する会社には、顧客思いの風土があったり、常に改善する文化があったり、向上心を持ち続けられる土壌があったりするもの。現状に満足せず向上していこうとする風土を作れば、社員の学ぶ意欲が高まり、経営者が指示をしなくても自然とスキルが伝承されていきます。
逆に、この文化がない状態でスキル教育の仕組みを作ってもほとんど意味がありません。誰も本気で学ぼうとしないからです。だからこそ、スキル伝承の第一歩は「自己成長することに喜びを感じる文化」を作っていくことに他なりません。
学びたくて仕方がない若手は、経験豊富な人にしがみついてでも教えてもらいたいと考えるはず。こうなれば、スキル伝承は7割方、完成しているようなものです。
学びのための仕組みを作るのは、残り3割へのアプローチに過ぎません。「なぜうちの社員が学ばないのだ」と憤りながら仕組みを作るのは、真逆のアプローチです。
では、自己成長することに喜びを感じられる文化を作った上で、どのような体制を整えていくべきなのでしょうか。次回のブログで解説します。
(安東邦彦/第2回に続きます)