顧客とWin-Winで適正価格(第1回) 〜「より良いものをより安く」だけでは勝てない | 中小企業の経営コンサルティングならブレインマークス
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2022.08.19

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顧客とWin-Winで適正価格(第1回) 〜「より良いものをより安く」だけでは勝てない

安東 邦彦

なぜ多くの企業は適正価格を提示できないのか

以前に公開したブログ「中小企業のコスト構造を考える」シリーズでは、中小企業が適性価格で商品・サービスを提供することの重要性について書きました。

原材料費やエネルギー価格の高騰が続く中で真に考えるべきは、商品やサービスをまっとうな価格で提供することです。しかし現実はそう簡単ではありません。こんな記事も出ていました。

(参考記事)

コスト高、企業の7割「価格転嫁できていない」 民間調べ(日本経済新聞4月19日)

https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL19HFL_Z10C22A4000000 

直近のコスト増に対し、「商品・サービスへの価格転嫁ができていない」と答えた企業は大企業で73%、中小企業でも68.6%に上ったとのこと。

価格転嫁できていない企業を業種別に見ると、ソフトウェア受託開発や情報サービスを手がける企業が90%以上を占めているそうです。受託中心の事業では特に、価格交渉が難しいということなのかもしれません。

そこで今回のブログでは再度、中小企業が向き合うべき「適正価格」について掘り下げて考えてみたいと思います。

そもそも、なぜ多くの企業はコスト増に苦しみながらも価格転嫁できないままでいるのでしょうか。そして、自信を持って適正価格を提示できるようになるためには、何が必要なのでしょうか。

「より良いものをより安く」だけでは勝てない

多くの企業が適正価格を提示できずに苦しんでいる背景として、私は「より良いものをより安く」提供しようとする日本人の魂があると思っています。

戦後の経済成長期において、日本製品は高品質と安さを両立して世界を席巻していた時代もありました。より良いものをより安く提供すれば売れる。それは大きな成功体験であり、時代が変わった今もなお、亡霊のように日本企業に取り憑いたままです。

実際に成長している企業を見れば、より良いものをより安く提供して成功しているように感じるかもしれません。この路線を疑うこともないかもしれません。

しかし、実はここに落とし穴があります。

本当に大切なのは、「より良いものをより安く提供するための事業を発明する」ということ。多くの日本企業はこの発想を持っていません。

より良いものをより安く提供するために、自分たちがより安い賃金で身を削っているようでは何にもなりません。より良いものをより安く提供しながらも、自分たちが儲けるための発明をしなければいけないのです。

その好例と言えるのが、世界中に店舗展開するファッションチェーン「ZARA」です。

ZARAでは一流ブランドのような服を安く提供しています。それを実現できるのは、自社にデザイナーを置かず、毎年トレンドのデザインを真似して服を作り、輸送コストを抑える工夫を行っているから。

こうして、ブランド品とそっくりであり、そんなに品質の悪くないも服を安く提供し続ける事業を発明しました。

他の業界を見ても、大成功している企業はやり方が根本的に違うことに気づくはずです。より良いものをより安く、そして自分たちが儲かる仕組みで提供する。そうやって市場競争力を持つからこそ、価格のリーダーシップを得られるのです。

中小企業こそ「事業を発明する」発想が大切

多くの企業がコスト増を価格転嫁できずに苦しんでいる一方で、報道では盛んに「あれも値上げ、これも値上げ」と取り沙汰されています。

値上げに踏み切れる企業は、価格のリーダーシップを持っているのです。圧倒的な市場競争力があるからこそ、値上げをしても顧客が離れることはないと自信を持てるのでしょう。

中小企業の経営者の多くは「うちには価格のリーダーシップなんてない」「そもそも自社製品さえないのに」と感じるかもしれません。

私は、そんな中小企業だからこそ事業を発明する発想が大切だと考えています。

たとえばブレインマークスが長くコンサルティングしてきた保険代理店業界では、基本的に自分たちで商品を作ることもなければ価格決定権もありません。それでも、顧客が感動するようなサービス体験を提供する事業を発明している企業は、飛び抜けた成長を見せています。

ビジネスは基本的に等価交換です。顧客が感じた価値と同等の価格か、それ以下であれば、顧客は「安い」「お得だ」と認識してくれます。つまり、企業がやるべきことは自社が提供する価値を高めるだけだと言えます。

では、そんな事業をどのように発明していくべきなのか。次回のブログでは具体例にも触れたいと思います。

(安東邦彦/第2回に続きます)

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