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職場のパワーハラスメントを防ぐことを目的とした労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」が2022年4月に改正され、中小企業にも適用が拡大しました。
中小企業においても、職場のパワハラ防止措置が義務化されています。
(参考)厚生労働省サイトより
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf
一昔前なら、部下を怒鳴り散らして叱責・叱咤する光景が当たり前だったかもしれません。しかし今では、たとえ「顧客のため」だったとしても、こうした行為はパワハラと認定される可能性があります。
そもそも部下に伝わらない叱責や叱咤には何の意味もありません。ところが実際の職場には、リーダーとして、マネージャーとしてのスキルが不足している経営者や管理職が非常に多いのも事実です。
リーダーとは、人を指導して引っ張っていく人ではありません。私はリーダーとは「理念とビジョンを伝える特命大使」であると考えています。
理念とビジョンを実現することに責任を負っているはずのリーダーが、不適切な方法で部下を叱責し、部下が会社を辞めてしまうことにでもなれば、理念やビジョンとはほど遠い状態になっていくだけ。
結果として、会社の業績を上げ続けることにもつながりません。
経営者や管理職の中には「こんなことまでパワハラと言われてしまうなんて……」と憤慨している人もいるかもしれませんが、そう思っているうちはリーダーとしてのスキルがないということなのです。
逆にスキル不足を自覚できれば、パワハラの問題を一気に解決していけるはず。
何を隠そう、かつては私自身がそのスキル不足をまざまざと突きつけられていました。社員が夢中になって頑張るゲームを作る
中小企業経営者の中には、事業を前進させるために必要なのは「売り上げを上げること」「顧客を大切にすること」だけだと考えている人が少なくありません。
かつてブレインマークスを創業したばかりの頃の私もそうでした。顧客により良いサービス、より価値の高いサービスを提供することだけが事業を伸ばす道だと考えていたのです。
これは短期的には正しいのですが、長期的に見れば会社を発展させていくことができません。会社経営には、より良いサービスを作ることと同時に、より良い組織と人材を育てることが求められるからです。
しかし以前の私は、組織と人を軽視していました。その結果、事業は一向に拡大しませんでした。
31歳でブレインマークスを創業し、一時は売り上げを伸ばすことができていたのですが、その陰では「なんでこんなこともできないんだ」と社員にきつく当たっていました。
結果的に社員は集団離職してしまい、ブレインマークスは私を含めたった2人の状態から再スタートせざるを得なくなってしまったのです。
その後、必死の思いで学びを求めてアメリカへ渡った私は、「世界で最も優れたスモールビジネスの権威」と評されるマイケル E.ガーバー氏からある言葉をもらいました。
それは「社員が夢中になって頑張るゲームを作るべきだ」というもの。
なるほど、たしかにそれまでの私は、社員が夢中になって仕事に取り組んでくれるようになる技術を持っていませんでした。以来私は、どうすれば社員が嬉々として頑張ってくれるゲームを実現できるのか、そのことだけを追求してきたのです。
私自身が苦い経験から学んだように、事業を運営する際にはまず、組織を整えなければなりません。会社全体が顧客にコミットし、それを楽しめる状態にする必要があります。
適切な人材を採用し、教育体制を整え、顧客にコミットすることで自分自身が幸せになれるのだと実感できる環境を提供するのです。そうしなければ、顧客のために長く働いてもらうことなどできません。
経営とは、事業を作り、人を作り、組織を作り、永続的に働いてもらえる環境を作り、コストを削減し、売り上げを上げていくことで成長していくもの。
経営者の多くは、人々の暮らしを変えたい、貢献したいと思って事業をやっているはずですよね。そう考えれば「パワハラなんて悪手でしかない」ことは容易に想像できるはずです。
では、どうすれば経営の中で「社員が夢中になって頑張るゲーム」を実現していけるのでしょうか。次回は、私がブレインマークスを立て直す過程で実践した方法についても紹介したいと思います。
(安東邦彦/第3回に続きます)