コンサルティング
前回のコラムでは、企業のコスト構造を考える上で、これからの真の論点は間違いなく人件費であると書きました。
少子高齢化が進み、限られた人材を奪い合わなければならないこれからの日本では、人件費は間違いなく高騰し続けていきます。それも、会社の経営にとって重要な人材であればあるほど。
たとえばIT業界。下請け構造のもとで作業をするエンジニア以上に、上流で企画ができ、コミュニケーションが取れる希少価値の高いエンジニアは、特に給与水準が上がっています。
これは、企業に成果を導ける人材、かつ絶対数の少ない人材だからこそ価値が高まっているということ。こうした人材を獲得できる企業はどんどん業績を伸ばしていくでしょう。
逆に、人材の質を真剣に考えてこなかった中小企業は、本当はもっと伸ばせるはずの事業を伸ばしきれないままでいます。事業を伸ばせる人を迎え入れることができていないのです。
では、限られた自社のコスト構造において、人件費をどう位置づけていくべきなのでしょうか。
一口に中小企業の人件費率といってもさまざまなケースがありますが、ここではまず、ブレインマークスの例を紹介させてください。
ブレインマークスでは人件費率の目安を粗利の45〜50%としています。さらに、粗利の6〜7%を採用・教育予算に充てています。
採用・教育予算の金額規模としては1200〜1300万円。社員数15名前後の会社としては、大きな数字だと言えるかもしれません。
私はこの予算を捻出するため、従来は広告宣伝費に割いていた予算を振り向けました。つまり、コスト構造を見直したわけです。
なぜなら、弱小企業だからこそ、ここに投資しなければ勝てないから。
企業としての魅力はどうしても大企業のほうが強いので、優秀な人材がほしいと思えば、中小企業はより多くの予算を割かなければならないのです。
人件費や採用・教育費は、長期的かつ重点的に投資すべき領域です。中小企業こそ、その覚悟を決めて取り組む必要があります。
しかし現実には、このことに気づいていない会社や、気づいていても取り組めていない会社が多いのではないでしょうか。
そもそも中小企業には、「人事」という考え方そのものがないというケースも珍しくありません。採用も教育も、社長が片手間でやっている。そんな企業も少なくないはず。
同じような状況の中小企業が多いからこそ、少しでも早く動き出すことが大切なのかもしれません。
その第一歩は、自社のコスト構造における優先順位を見直すことです。
(安東邦彦/第3回に続きます)