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2022.05.17

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中小企業のコスト構造を考える(第1回) 〜いま、最も深刻なコスト上昇とは

安東 邦彦

エネルギー価格や原材料費の高騰が真の問題ではない

中小企業の経営を取り巻く情勢は、ますます不透明さを増してきました。

新型コロナウイルス禍によってグローバルでのモノの流れが阻害され、半導体や自動車部品などの「品不足」問題が続いています。

ここ2年を振り返ってみても、人気のゲーム機の品薄でいわゆる「転売屋」の動向が問題となったり、新車を購入しても「納車は半年後、1年後」といった状況だったり。

社会に明らかな影響がおよぶ中で、中小企業でも経営環境の厳しさを実感している経営者は少なくないでしょう。

さらに2022年に入ってからは、国際情勢の激変によってエネルギー価格や穀物価格の高騰も続いています。今後、幅広い業種に悪影響が広がることは避けられそうにありません。

毎日のように「原材料費の高騰によって経営に逆風が……」といったトーンの報道に触れるようになりました。

たしかにエネルギー価格や原材料費の高騰は中小企業の経営に何らかの影響をおよぼすでしょう。しかし、中小企業が向き合うべきコスト構造の問題とは、本当に目の前の高騰だけなのでしょうか。

私自身は、中小企業の多くに共通する「根本的なコスト構造の問題」があると考えています。それは今に始まったことではありません。

中小企業が最も真剣に考えるべきコスト

企業のコスト構造について考える際に重要なのは、経営を左右するコスト要因が将来にわたって続くものなのか、それとも一時的なものなのかを見極めることでしょう。

現状のエネルギー価格や原材料費の問題は、業種によっては非常に深刻だと思います。この状況が長引くことは大きな問題です。

とはいえ、これらの原価は永続的に高まり続けるわけではありません。輸出入の状況が改善されれば、あるいは国際情勢に一定の落ち着きが見られるようになれば、価格高騰の流れが収まることも予想されます。

では、中小企業の経営を将来にわたって左右するコスト要因とは何なのか。

それは「人件費」です。私は、中小企業が最も真剣に考えるべきコストは人件費だと認識しています。なぜなら人件費は、これからの日本社会で間違いなく高騰し続けていくからです。

人件費は着実に高騰を続けている

言うまでもなく、少子高齢化が続く日本では、今後数十年にわたって人手不足の状況が継続されます。限られたパイの奪い合いのなかで、人件費はこれからさらに高騰し続けていくのです。

企業のコスト構造を考える上で、これからの真の論点は間違いなく人件費でしょう。

日本では真の意味でのインフラが起きないと言われ続けていますが、人件費は年を追って着実に上昇し続けています。

私が学生だった約30年前は、アルバイトの時給といえば600円程度が相場でした。それが今では、東京都心で時給1200円を超えるアルバイト募集も珍しくありません。

エネルギー価格や原材料価格は、昨今急激に上昇しているため目が行きやすくなっていますが、人件費も長い時間をかけて着実に高騰し続けているわけです。

そしてこの高騰は、真綿で首を絞めるように企業の経営を圧迫していきます。

しかし現実には、人件費について深く考えることなく経営を続けている中小企業の社長が多いようにも感じます。

論点は「人件費が高いか、安いか」ではありません。「自社のコスト構造において人件費をどう位置づけるのか」です。

次回のコラムでは、中小企業のコスト構造における人件費の意味について深く考えてみたいと思います。

(安東邦彦/第2回に続きます)

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