コンサルティング
企業の存在意義を表すパーパスや理念。
前回のブログでは、パーパスや理念を本気で実現するという覚悟こそが経営者に求められているとお伝えしました。
パーパスや理念への覚悟を置き去りにしている企業の多くは、社内で何らかのトラブルを抱えています。経営者同様に、社員もパーパスや理念にコミットせず、自主性を持てず、そして会社を辞めていってしまう……。
ブレインマークスのコンサルティング現場でも、こうした状況が見られることは珍しくありません。私たちは企業経営の6大課題の一つとして「組織が一つにまとまらない」ことを挙げています。
▼経営の6大課題とは?
https://www.brain-marks.com/beginner
なぜ、多くの企業ではパーパスや理念への覚悟が忘れ去られてしまうのでしょうか。
なぜ、いつの間にかパーパスや理念よりも業績が優先されるようになってしまうのでしょうか。
私はよく、経営者が意識すべきこととして「思考と言葉の順序を入れ替える」ようにアドバイスしています。
企業として最優先に考えることは何でしょうか。私は、パーパスや理念に基づいて社会へ貢献することだと考えます。
パーパスや理念を本気で追いかけていけば、自然と他社とは違う工夫を凝らすようになります。それがビジネスを進化させることにつながり、顧客や社会に提供できる価値を増大させ、売り上げも大きくなり、ひいては社員や設備にも投資できるようになるのです。
しかし、経営者の中には「売り上げを拡大すればパーパスや理念を実現できる」と考えている人が少なくありません。これでは、本来あるべき順序とは逆です。
社長がこの考え方で動けば、社内での号令は「売り上げ」「業績」に関するものばかりになってしまうでしょう。本来は「パーパスや理念を実現するために今期はこれだけ頑張ろう」と発信しなければならないのに。
「利益を出すからこそ社会に貢献できるのだ」と主張する人も少なくないことは承知しています。たしかにファイナンスの視点で物を見れば、利益を出すことが第一になるのかもしれません。
しかし、その考え方で企業は成長し続けられるのでしょうか。
1998年に設立された米グーグルは、創業当時から「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」という経営理念を追いかけ続けています。
その思いに共感する人々が集まり、提供するサービスは進化を続け、今やグーグルは世界のテクノロジー産業を牽引する存在となりました。現代の企業におけるパーパスや理念の重要性を体現している存在だと言えるでしょう。
企業は何らかの価値を社会に提供しなければいけない存在です。どんな価値を提供するのかをパーパスや理念で表現し、それを自分自身の夢だと共感してくれる人を集め、一緒に実現していく。
私はこれこそが経営の正しいあり方だと考えています。それは大企業に限った話ではありません。
たとえば、個人経営の町の駄菓子屋さんでもやるべきことは同じ。
「この地域の子どもたちを笑顔にしたい」と本気で思えば、子どもたちが喜ぶ商品を置いて、子どもたちが集まるコミュニティを作り、子どもたちとの最良の接し方を考えることになるでしょう。
そして、やがてはその姿に賛同する人たちが現れ、応援してくれるようになるはずです。売り上げの大小は関係ありません。
この原理原則を無視した会社は、一時的にうまくいくことはあっても、長くは続かないと思います。パーパスや理念に基づいて価値提供を考えなければ、商品作りもマーケティングも早晩破たんしてしまうからです。
グーグルを引き合いに出すまでもなく、日本にも尊敬できる中小企業がたくさんあり、そうした企業はしっかり成長し続けています。その現場ではきっと、経営者がパーパスや理念を信じ、歯を食いしばって頑張り続けているのだと思います。
仮に今はその状態ではないとしても、諦めるべきではありません。中小企業の場合は、経営者の考え方一つで会社そのものを一気に変革できるからです。これこそ、中小企業経営の面白いところでもあります。
普段は忙しくて、なかなか目の前のこと以外に思いを馳せるのは難しいかもしれません。
それでも、1カ月に1回でもいいから、目の前のことを離れて考えてみてほしいのです。そうした場を提供するためにも、私たちはコンサルティング活動に注力し続けていきたいと考えています。
(安東邦彦)
▼【中小企業のパーパス】の過去記事はこちら