コンサルティング
前回まで、経営者の思いを社内へ伝えるための方法を紹介してきました。
ブレインマークスでは、社員とともに現場で思いを共有したり、1on1ミーティングや週次ミーティングで考えを伝えたりと、さまざまな場を大切にしています。
さらには「経営計画書」や「カルチャーブック」、そして具体的な業務に落とし込んだガイドラインを作成して、社長である私の思いを言語化しています。
こうした方法はどんな業種の、どんな企業でも有効ははず。
とはいえ、経営者が思いを伝えるべきタイミングは「平時」だけとは限りません。
直近では社会全体が新型コロナウイルス禍に陥り、多くの業界が影響や打撃を受けました。このような「有事」にこそ、経営者が語る言葉は大きな意味を持つもの。
大変なとき、ピンチのときに、経営者はどのようなマインドセットを持って発信していくべきなのでしょうか。
結論を言ってしまえば、私自身は何らかの特別な方法を持っているわけではありません。
やっていることと言えば、日々「社員が働く理由」を考え続けること。大変なときも、ピンチのときも、そればかり考えてきました。
ブレインマークスに限らず、中小企業に在籍する社員は、なぜそこで働いているのでしょうか。
その理由は3つに集約されると私は考えています。「会社が好き」「仲間が好き」「仕事そのものが好き」。こまかく見ればいろいろと出てくるかもしれませんが、トータルで見れば、社員が働く理由はこの3つに絞られるのではないかと思うのです。
人は、好きな人のためなら頑張れるもの。だから私は経営者として、社員に会社と仲間と仕事を好きになってもらえるよう動かなければならないと覚悟しているつもりです。
ときには、できる範囲で待遇や福利厚生の改善に踏み出すこともあります。たとえば以前、採用競争力を高めるために新卒社員の給与を月額1万円引き上げた際には、全員の給与も1万円ずつ引き上げました。
派手なことはできませんが、小さな変化を積み重ねています。こうした日頃からの積み重ねを経て、ピンチのときにも活躍する社員が育っていくのです。
待遇や福利厚生だけでなく、仕事自体の設計もまた、社員の頑張る理由につながっていきます。
ブレインマークスの例をお伝えしましょう。
ブレインマークスでは現在、個別クライアントへのコンサルティングが主軸の事業となっています。正直に言うと、長年のノウハウがある研修事業のほうがコンサルティングよりも儲かる可能性もあります。
なぜなら、個別のコンサルティングは研修と比べて業務面での負荷が大きく、利益率が低いから。これは紛れもない事実です。
しかし、コンサルティングだからこそ、担当する社員が心を震わせられる瞬間もあるのです。
大きな責任を担い、難しさにも直面しながら、その分だけ充実感を得られる。若いメンバーもそんな仕事を早くから経験できるように業務を設計しています。
やりがいのある仕事を提供すること。それも経営者の大きな役割でしょう。
社員それぞれが自身の働く理由に確信を持ち、やりがいを感じられていることが、会社の成長につながるのは間違いありません。
そして、そうした環境があるからこそ、経営者の思いを伝えるさまざまな施策が実を結ぶのです。
(安東邦彦)
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