コンサルティング
今回のブログでは、企業の新陳代謝について考えます。
一説によると「企業には寿命がある」と言われています。各種調査の結果や、多くの経営者がもつであろう実感は、それを裏付けるものなのかもしれません。
しかし一方では、企業の寿命と言われる30年をはるかに超えて、今も成長を続ける企業が数多くあるのも事実です。
この「企業の寿命30年説」は、企業の一生を人間になぞらえたもの
人間が生まれて、幼少期や少年期、青年期、壮年期を過ごし、やがて役目を終えて死んでいく。企業も同じような流れをたどるという考え方です。
成長過程は企業によってバラバラですが、少なくとも企業が生まれた瞬間から老い始めているというのは確かでしょう。
ただ、企業には、人間とは違ったレベルで新陳代謝を繰り返すことができるという特徴もあります。
企業にとって効果的な新陳代謝とは、どんなものなのでしょうか。それこそが、寿命あるいはそれ以下で終わってしまう企業と、寿命を超えて長生きする企業を分けるものです。
新陳代謝がうまく働いている企業は、「挑戦し続けていて」「社員がイキイキとしている」という特徴があります。
この「イキイキ」について、参考になるデータを見てみましょう。
下図は一般社団法人はたらく未来研究所が実施した「多様な人材がイキイキと働くことができる職場とは」をテーマにした調査結果からの抜粋です。
様々な設問を通して「会社のイキイキ度」を測っています。
上図に並ぶ設問は、すべて会社のイキイキ度を測る尺度になっているかと思います。設問を自社にあてはめて考えてみることで、現状を知るきっかけにもなるのではないでしょうか。
中でも注目したいのが、「私の会社には、社員をワクワクさせる雰囲気がある」という設問です。
調査においては、「あてはまらない」が23.2%、「あまりあてはまらない」が47.7%、合わせて70.9%という非常に高い数字になっています。
つまり、社員の7割以上が会社でワクワクしていないのです。
社員がワクワクしていることの大切さは、経営者には釈迦に説法でしょう。これをさらに検討する前に、同調査からもうひとつデータを参照してみます。
設問を通して「職場のイキイキ度」を測っています。
上図で注目したいのは、「私の職場には、仕事が楽しくなるような仕掛けがある」という設問です。「あてはまらない」が20.0%、「あまりあてはまらない」が47.8%、合わせて67.8%と、否定的な回答の中では突出しています。
図1で見た「会社のワクワク感」の欠如と無関係ではないでしょう。
ここで問いたいのが、「仕事が楽しくなるような仕掛け」の中身です。仕掛けというと小手先の取り組みのようなイメージを持ちますが、私はそうではないと思います。
チャレンジこそが、仕事を楽しくさせる仕掛けなのではないでしょうか。
チャレンジがいかに大切か、そしてチャレンジを忘れることがいかに恐ろしいかについては、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスが語っています。
1997年、ベゾスは株主に向けた書簡において、冒頭で「顧客数が150万人を超え、収益は838%増の1億4780万ドルを達成した」ことを記しました。しかし、その直後に彼がつづった言葉に誰もが驚かされました。
「これはインターネットにとっても、我々アマゾン・ドット・コムにとっても、第1日目(Day 1)なのです」
さらに、書簡の最後はこう結ばれています。
「私たちは楽観的ではありますが、警戒を怠らず、緊迫感を維持しなければなりません。(中略)私たちはこれまでやってきたことに満足していますが、それ以上にこれから私たちがやりたいことにワクワクしています」
付け加えると、株主からの「それでは2日目(Day 2)とはどんなものか?」と尋ねられたベゾスの回答は明確でした。
たった一語「停滞」。
そして「そのあとには、耐え難い衰退が続き、やがて死に至る」と回答しているのです。
成長を続ける企業では、すべからく管理部門の重要性が高まっていきます。もちろん企業活動には管理が必要。だからこそ、いつの間にか管理項目ばかりが増殖してしまう傾向にもあります。
本来の目的を離れて、「管理のための管理」がはびこってしまえば、それはチャレンジを阻害するものでしかありません。つまり、ベゾスの指摘する2日目(Day 2)へと会社を進ませてしまうのです。
こうなると、決してワクワク感を生み出すことはありません。
創業初日のワクワク感を保ち続けるのは非常に困難です。しかし、それこそが寿命を超えて会社を永続させる秘訣なのです。
(安東邦彦)