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2022.02.11

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中小企業と人権問題(第2回) 〜社員・取引先・求職者から注視されている経営者

安東 邦彦

企業にとっての、いちばんのコアなファン

中国・新疆ウイグル自治区を巡る人権問題に端を発し、世界的な大手アパレルメーカーが「強制労働によって生産された原材料を使っているのではないか」と批判されています。

なぜこうした企業や経営者は批判を集めてしまうのでしょうか。

背景にはもちろん、世界的に人権意識が高まっていることが挙げられます。国連によるSDGsのメッセージが浸透するとともに、企業には「誰一人取り残さない経営」が求められるようになりました。

さらに企業の文脈で言えば、経営者が批判されている背景には、投資家の怒りがあるのではないでしょうか。

消費者が人権問題に対して怒りの声を上げれば上げるほど、投資家としては「企業の顔である経営者のクリーンさやクレバーさ」が毀損されていると考えざるを得ません。

人権問題に気を配らないあの企業は、自社が儲かればそれでいいと考えているのでは……?

そう思われたら、投資家はどんどん離れていってしまうでしょう。投資家は、自社のいちばんの「コアなファン」でもあるはず。

そうしたコアなファンが離れていってしまうことこそ、本当のリスクなのかもしれません。そしてそれは、中小企業にとっても無縁なことではないと考えます。

中小企業も、社員・取引先・求職者から見られている

このブログの第1回で、人権問題や環境問題は「中小企業にとって対岸の火事ではない」と書きました。

たしかに中小企業は大企業と違って、株を公開していないし、「いちばんのファン」たる投資家からのプレッシャーもないでしょう。

それでも、人権問題や環境問題をどのように捉え、行動しているかについては、周囲からの視線にさらされていると考えるべきです。社員も取引先も、そして求職者も見ているのです。

世界的に価値観の変容が広がっている中で、中小企業だけがその枠の外に置かれることはありえません。

日本経済は「失われた30年」「衰退」といった言葉で語られますが、何だかんだといって、人々が生きる世の中の環境はどんどん豊かになってきています。

物質的な豊かさを認識できた先にある欲求は、気持ちの面での豊かさを得ること。そんな時代に、「気持ちで豊かになれない会社」は好感をもたれません。

私たちの若い頃は、親世代が「生き残ることに必死」であり、私たちもその価値観をうっすらと引き継ぎながら成長してきました。でも、今の若い人たちは違います。

特別なパワーを持つ経営者だからこそ

私自身はというと、経営者として人権問題や環境問題を声高に語れるほどの見地はまだ持ち合わせていないかもしれません。

それでも私は、こうした世界的な問題に対するアンテナを常に張り巡らせ、意識して過ごしているつもりです。

なぜなら、経営者という立場は特別なパワーをもつ存在だと自覚しているから。

経営者は、ちょっとした行動や言動で社員のプライドや生きがいを簡単に崩してしまうこともできます。だからこそ「そうなってはならない」という意識を強くもたなければならないと思うのです。

(安東邦彦/第3回に続きます)

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