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2021.06.15

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後継者の選び方 〜「誰にするか」だけでなく、「やり方を考える」までが経営者の仕事

安東 邦彦

親としての悩みが尽きない「親族内承継」

今回のブログでは、中小企業がいずれ直面することになるであろう事業承継について一考します。

世間で「老舗」と呼ばれる歴史ある企業では、親族による事業承継が重要視される傾向が往々にしてあります。「老舗の○代目」という肩書きに触れる機会も多いのではないでしょうか。

一方、老舗ではなくても、自ら創業した中小企業の経営者の中には、「親族に会社を継いでもらいたい」という思いを持っている人も少なくないでしょう。

事業承継にはいくつかの方法がありますが、それぞれに一長一短があります。親族内承継もその例外ではありません。

親としての悩みがなかなか尽きることのない、事業承継の諸問題。その実態を探りつつ、後継者の選び方を考察してみたいと思います。

親族内承継を望む経営者にとってはもちろん、それ以外の承継の形を考えている経営者に対しても、示唆を与えてくれる事実が見えてくるはずです。

時代が変わっても根強い親族内承継

それでは最初に、中小企業の事業承継においてどんな形態が採用されているのか、その実際を見てみましょう。

下図は中小企業を応援するサイト「ミラサポ」が帝国データバンクの「信用調査報告書データベース」「企業概要データベース」から再編加工した資料です。08年から12年までの現経営者の承継形態を規模別にまとめています。

上図によると、小規模事業者においては約65%が親族内承継で事業を継いでいます。中規模企業においてはその比率が下がり、約42%です。5割を切っているとはいえ、その比率はかなり高いと言えるのではないでしょうか。

時代は変わったとよく言われます。

事業を親族(特に長男)が継ぐことには合理性がない。

自分の人生を親に勝手に決められたくない。

親が始めた事業のための政略結婚など時代錯誤も甚だしい……。

そうした言い分はもっともだと思います。しかし、これらの慣習は今でも根強く、そこに葛藤があるのが現実なのです。

親族内承継へのネガティブなイメージと弊害

上で述べたように、親族内承継は不合理であるとの認識は広がりつつあります。

では一体、その不合理の中身とはどんなものなのでしょうか? 下図は再度上記資料からの抜粋です。「親族以外を後継者とする理由」を聞いています(トップ5抜粋)。

上図で5割近くを占めた上位2つの理由「役員・従業員からの理解が得やすい」「役員・従業員の士気向上が期待できる」は、おおむね納得できるものです。

上記の回答を裏返すと、親族を後継者とすると役員・従業員からの理解が得られず、彼らの士気をくじいてしまうという経営者の思いが窺われます。

さらに、「取引先との関係を維持しやすい」という理由も挙がっています。

こうした意見が挙がる背景には、一般に親族内承継へはネガティブなイメージがあり、それを経営者も自覚していて、かつ経営者は実際の弊害も実感しているということでしょう。

事業承継のあるべき形はケースバイケース

とはいえ、親族内承継への否定的な意見だけを取り上げるのは公平ではありません。親族内承継を望む理由も知っておくべきです。

下図は、同じく上記調査から抜粋した親族内承継をする理由です(トップ5抜粋)。

上図を見ると、トップは「血縁者に継がせたい」という理由ですから、非常に主観的な理由と言わざるを得ません。ただ、その他の理由を見ると、それなりの合理性があります。

注目したいのは、「役員・従業員からの理解が得やすい」が重複していること。

また、「金融機関との関係を維持しやすい」という理由は、【図2】の「取引先との関係を維持しやすい」とほとんど同じ意味合いだと考えられます。

親族外承継には現実問題として、後継者による個人保証の借り入れの引継ぎや自社株式の買い取りが困難というデメリットもあります。

こうして見ていくと、一概に「親族内承継だから悪い」「親族外承継だから良い」と言い切ることはできません。

結局のところ、事業承継のあるべき形はケースバイケースなのでしょう。

今回ご紹介したデータを参考にしつつ、自社がどんなケースなのかを見極めるのも現経営者の大切な仕事です。準備に早過ぎるということはありません。

(安東邦彦)

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