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2021.02.25

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「部下が自分で考えるようになる」教え方とは 〜1から10まで教えても、後には何も残らない

安東 邦彦

「仕事を覚えてくれない」「指示を待つばかり」という部下への悩み

今回は、「部下に対する上司の悩み」としてよく挙げられるテーマについて考えたいと思います。

「何度言っても部下が仕事を覚えない」

「指示を待つばかりで自分から動こうとしない」

「自分勝手な判断・行動で現場に混乱をもたらす」

このような悩みに上司がうまく対処することは、なかなか難しいもの。なぜなら、そうした部下には「いくら注意しても変わらない」という特徴もあるからです。

しかし、何も解決法がないはずはありません。上記のような部下がいたとしても、どうにかうまくやっている上司はいるものです。

一方では困り果てている上司が多数存在するのはなぜなのか。

もしかすると、対処法には限りがあると認識されているからかもしれません。

根本的には「言って聞かせるしかない」のだと思います。ただ、その言って聞かせるやり方に違いがあるのでしょう。

教えても仕事を覚えてくれない、指示を待つばかりという部下を、どのように指導すれば「自ら考えて行動する社員」に育てられるのか。それは上司ばかりでなく、会社全体にとっても常に課題です。

その具体的な方策を見ていきましょう。

「指示待ち社員」は現実にたくさん存在する

それでは最初に、上司(先輩社員)の部下(後輩社員)に対する悩みや不満の実際を確認しておきます。

下図は「ダイドー働く大人力向上委員会」が行なった「職場コミュニケーションに関する意識調査」からの抜粋です。若手社員への不満を訊いています。

上図では、「指示するまで動かない」が26.9%と、指示待ち社員が現実に多数存在して上司を悩ませていることがわかります。

また、同率の「他人の話を聞かない・理解しない」も、仕事を覚えない、自分勝手な判断・行動で混乱を招くことにつながる部下の特徴といえるでしょう。

こうした部下の態度に対して提案できる方策は「教えないことで教える」というものです。

具体的には、部下から質問があったときに「反問する」という方法。

なぜこれが効果的なのでしょうか。まずは学生時代にまで記憶を遡らせてみてください。

部下にとっての「検索エンジン」になってしまう上司

学生時代、勉強を進める中で解けない問題に突き当たった経験は幾度となくあるでしょう。

その際にあなたは、どんな方法で解決しようとしましたか? 多くの人は3つの方法を取ったと思います。

1つ目は先生や友達に尋ねるというもの。正解を導く手順を彼らは丁寧に説明してくれたでしょう。

次に、参考書を参照しながら正解までの手順を確認し、自分で解いてみるという方法。

そして最後に、ヒントもないままの手探りで、とにかく独力で解いてみるというものです。

この3つの方法のなかで、最も早く正解にたどり着けるのは1つ目です。しかし、ここで自分の学生時代を思い出してください。安易に人に答えを求めて正解を得ても、自分の頭には何も残らなかった……という苦い記憶はありませんか?

2つ目の方法はそれよりはマシかもしれません。やり方によっては「実」になります。ただ、自分で解いた気になってしまって、実は肝心なところを理解していないということも多々あります。

最後の方法では、正解に至るまでの手順が確実に記憶に残ります。人によっては、問題が解けた瞬間の喜びまで鮮明に覚えている、という方もいるのではないでしょうか。

部下が仕事でつまずいているときに、すぐに口を出して答えを提示してしまう上司は、1つ目の方法における先生の役割を果たしてしまっています。部下は正解に最も早く到達しますが、彼の頭の中には何も残らないでしょう。

のみならず、部下は「わからなければ聞けばいい」とばかり、上司を自分専用の検索エンジンのように捉え始めてしまうかもしれません。

これでは部下が仕事を覚えるはずがありません。上司と部下の間に本来あるべき信頼関係を築くことも困難でしょう。

「教えない」ことで部下の自己効力感を育てる

そうならないために大切なのは、部下に誇りを持たせることです。

心理学に「自己効力感」という概念があります。これは米スタンフォード大学心理学教授を長く務めたアルバート・バンデューラ氏が提唱したものです。

自己効力感とは、「自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できるかという可能性の認知」と定義されています。

要は、「自分はできる。それだけの能力がある」という自覚のこと。

もう一度、学生時代に戻って考えてみましょう。先に挙げた3つの解決方法のなかで、自己効力感が最も得られるのはどれでしょうか。

それは、一から自分で解いた3つ目に方法に他なりません。

だからこそ上司は、質問してきた部下に反問し、部下自身に考えさせるアプローチを取るべきなのです。

この方法は一見遠回りなやり方に映るかもしれません。

しかし、懇切丁寧に何度も手順を教えてあげたとしても、それはほとんど部下の記憶に定着することはありません。さらに、自己効力感を得る機会さえ奪ってしまっています。

また、部下が自分で考える余地がないほど徹底して指示を出すやり方についても、同じことが言えます。それは「お前は俺の言った通りに動きさえすればいいんだ」と宣言するに等しい行為です。

そこに仕事のやりがいはなく、部下には「やらされ感」ばかりが蓄積されていくでしょう。

こうしたことは、「もし部下が自分の子どもだったら」と想像することで理解しやすくなります。

親は自分の子どもの宿題についてすべて答えを教えてあげたり、あらゆる行動に逐一指示を出したりするでしょうか。

ほとんどの親はそうしないはずです。なぜなら、それが子どものためにはならないと本能的に知っているからです。

本当に部下を育てたいと思っているのなら、ちょっと遠回りして、「教えない」ことを試してみてはいかがでしょうか。

(安東邦彦)

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