コンサルティング
前回・前々回のコラムにおいて、私はオフィスという空間の重要性を語ってきました。
世間では「ニューノーマル」の名のもとにリモートワークの拡大が推奨されています。私はそれでも、感染防止策を最大限に取った上で、オフィスで働くことを大切にしたいと考えています。
とはいえ、リモートワークという働き方自体を否定するつもりは毛頭ありません。
リモートワークを前提として活躍したいと考える個人の希望は、できる限り尊重されるべきだと思います。
実はブレインマークスでも、最初からフルリモートで働くという条件で現在「リモートワーカー」の採用を進めていています。
会社としての機能の一部をお任せするとしても、相手が信頼できる人材であれば、オフィスにいようがいまいが条件や成果は変わらないと考えたからです。
ブレインマークスにとってのリモートワーカーは、業務委託の外注さんではなく、時給制のパートさんです。一定の帰属意識を求めつつも、社員とは違う立場として融通のきく働き方を実現しています。
発展途上の中小企業においては、リモートワーカーを増やしながら現状のオフィスを維持していくこともまた、現実的な方法なのかもしれません。
リモートワーカーは、会社と「適切な距離感」を保ちながら活躍してくれるという点でもありがたい存在です。
人事や組織開発の文脈では昨今、「メンバーシップ型とジョブ型」という雇用のあり方の違いが盛んに議論されています。
メンバーシップ型とは、簡単に言えば「まず人を雇用し、その後で仕事を割り当てていく」方式。日本の新卒一括採用はその典型と言えます。
対するジョブ型は「まず必要な業務を洗い出し、その業務に最適な人材を雇用する」方式です。
ちなみにメンバーシップ型は「ロイヤリティ型」と言い換えることもできます。日本では、若い人材を育成枠として採用し、長く成長をサポートしていくかわりに会社へのロイヤリティを求めるやり方として定着していますよね。
つまり多くの企業では、「できる限り会社とは近い距離でいてね」というメッセージを出しながら人材を雇用しているということ。
会社と社員の距離が近いということは、摩擦が生まれる可能性も高いということでもあります。
世界の歴史を見れば、戦争や紛争は多くの場合、隣国との間で発生しています。近い距離にいるほうが摩擦は増える。これは人間も同じだと思うのです。
遠隔で働くリモートワーカーさんの場合は、物理的にも心理的にも、適切な距離感を保って働き続けられるのではないでしょうか。
会社に必要な機能を切り出してリモートワーカーにまかせていくことは、ジョブ型の採用を進めることにもつながります。
従来のロイヤリティー型とリモートワーカーによるジョブ型。そんな切り分けも、今後は広がっていくのかもしれません。
会社組織のコアな部分を無理に急拡大することなく、リモートワーカーの力で事業を拡大していくこともできるはずです。
オフィスで働くことを重視しているなら、何も新しい働き方を模索しなくてもいいのではないか……?
そんな疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
誤解を恐れずに言えば、私がリモートワーカーを活用して組織作づくりを進めているのは一つの「実験」なのです。
私は世の中の新しい動きに無分別に飛びつきたいと思っているわけではありません。しかし、新しい動きにアンテナを張り、柔軟に取り入れて試してみることは大切だと思っています。
なぜならブレインマークスは、中小企業に新たな価値を届けていかなければならない会社だから。
これは私が常日頃から思っていることなのですが、世の中で話題になる情報は、ほとんどが大企業向けのものだと感じませんか?
オフィスをなくしてしまう、リモートワーク手当を出す……。そうした施策は大企業ならできるかもしれませんが、中小企業にはなかなか難しいのが現実です。
だからこそ私たちは、世の中で語られている言説をただ取り入れて発信するのではなく、私たち自身が挑戦して事例を作り出していかなければならないと考えています。
ブレインマークスが実行してみて、良い変化を感じられたことであれば、きっと多くの中小企業に役立つはず。
これからもその視点を忘れずに、新しい挑戦を続けていきたいと思っています。
(安東邦彦)
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