コンサルティング
入社する前から仕事ができる人はいない
前回は、中途入社したメンバーとの
「価値観合わせ」「文化合わせ」の重要性についてお伝えしました。
では、その前段である「採用時点」では、
応募者のどこを見て判断基準とするべきでしょうか。
ブレインマークスの場合、中途採用でいつも見ているのは、
まず「質問したことに対してちゃんと返してくれるか」ということ。
そして「話している内容に嘘がないか」。
せっかく入社してもらうのであれば、
性格が悪い人よりは良い人のほうがいいに決まっています。
中途採用の面接の場合は、表情一つでそれが分かってしまうこともあります。
この話をすると、「社会人経験のある人を採用するんだから、
性格よりもまず“仕事ができるかどうか”を見極めるべきだろう」
という経営者もいます。
でも私は、いつも思うのです。
「入社する前から仕事ができる人なんて、本当にいるの?」
中途では「仕事が好きではない」応募者も多い
「好きこそものの上手なれ」という言葉があるように、
人は自分が好きだったり、自分が得意だったりする分野であれば活躍できるもの。
私の場合、若い頃は文章を書くことがとても苦手でした。
それはもともと、文章を書くことが好きではなかったからです。
ただ、社会人としては「ちゃんとした文章が書けなきゃいけない」というシーンにも
たくさん出くわしました。
私の場合はこの苦手と向き合い、鍛えました。
その結果として、自分の力は倍増したと思います。
誰でも、どんな人でも強みは持っているはずです。
しかし、それを面接で見極めるのは難しいものです。
一方では、かつての私のように苦手な分野を抱えて苦労している人も少なくないでしょう。
採用シーンではそうした「できること/できないことを見極めようとする」よりも、
「仕事を、会社を好きになってもらう」ことに力を注いだほうが良いと考えています。
そうしなければ、肝心の強みを発揮してもらえる可能性も低くなってしまうからです。
中途で応募してくる人の場合は、
前職への不満や不安を抱えているケースも多いでしょう。
その時点で「仕事が好きですか?」と問われても、本心では「No」かもしれません。
仕事や会社に対するマイナスのイメージをプラスに変えてもらう。
そのために入社前も入社後も働きかけていく。
経営者は、その努力を続けていくことが大切です。
サッカーの才能があっても、サッカーが嫌いならうまくなるはずがない
前回お伝えした「価値観合わせ」「文化合わせ」は、その意味でも重要となってきます。
まずは、ともに働く仲間を好きになってもらう。
そして仕事のやりがいと意義を見出してもらう。
その過程では、自社の価値観と文化が大きな意味を持つのです。
ある子どもが天才的なサッカーの才能を秘めているとしましょう。
でも、その子がもしサッカーが嫌いで、ボールに触ろうともしないとしたら、
サッカーがうまくなるはずはありません。
まずはサッカーを好きになってもらうことが必要です。
会社におけるマネジメントも同じだと思います。
今やっている仕事に何の意味があり、どんな風に人の役に立っているのか。
それを伝え続けて、仲間と仕事を好きになってもらうしかありません。
仲間が好きになり、会社が好きになれば、
仕事なんて勝手にできるようになっていくもの。
仲間と会社が好きなら、うまくいかなくても素直に周囲へ相談でき、
アドバイスも素直に聞き入れられるでしょう。
その先に本人は、他のメンバーとの能力差を感じるかもしれません。
経営者から見れば五十歩百歩でも、本人にとっては大きな差。
そのときこそ得意分野を見つけてあげて、
それが伸びるような道を示してあげることが重要なのです。
(安東邦彦)