コンサルティング
中途採用でスキルより重要なものは……
前回に引き続き、今回も中途採用者のマネジメントについて考えたいと思います。
経営者としては、
「まっさらな状態で入ってくる新卒のほうが価値観を合わせやすい」というのが
本音ではないでしょうか?
新入社員はスキルも経験も未熟ではあるものの、
まだ「社会人とはこういうものだ」という思い込みが少ないからです。
一方で、他社で社会人として働いた経験のある中途の人はスキルを持ち、即戦力になり得ます。
ただ、既に前職の経験があるため、
「仕事とはこういうものだ」という独自の価値観をもっていることがほとんどです。
中途採用を行なう際は、その人がもつ経験やスキルに目を奪われがちです。
しかし、その人の価値観と自社の価値観が合っていなければ、
そもそもその人が活躍できる環境にすらならないことがあります。
こうして書いてみると「当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、
案外多くの会社で起きている問題なのです。
ブレインマークスで続けていること
ブレインマークスでも、ここ数年は中途採用に取り組んできました。
彼らは、それぞれが前職の経験で得たスキルと価値観を持ち寄ってくれました。
新卒のプロパー社員ばかりで構成されたブレインマークスにはなかった良い文化も、
彼らによってたくさんもたらされています。
一方で、ブレインマークスの価値観にそぐわない考え方も当然ながらありました。
そのため、入社直後の時期はもちろん、現在に至るまで、
彼らとはずっと「価値観合わせ」と「文化合わせ」を続けています。
私たちの事業の根幹である、
コンサルティングのスキルやセミナー運営などのスキルも、もちろん教えます。
しかし、それ以上に重視しているのが「価値観合わせ」と「文化合わせ」なのです。
「新人時代に身につけた価値観や志向は変えにくい」という事実
中途入社したメンバーには、どのような価値観を伝えているか。
それを簡潔にまとめるのは難しいのですが、
一つ言えるとすれば、私は「仕事は楽しいもの! 会社のメンバーは仲間!」という
価値観を大切にしてきました。
でも以前の会社で、社内の他のメンバーと競い合うことばかり経験していたら、
私のこの価値観にすんなりなじめるでしょうか?
本当の意味で価値観を合わせていくには、長い長い時間がかかるものだと思っています。
また、ブレインマークスのメンバーは基本的にみんな企画職で、頭脳労働です。
頭脳労働における思考の癖は、新人の時期のほうが身につきやすいものです。
もし社会人になったばかりの頃に「質よりも量を求める職場」にいると、
その思考が癖になってしまうこともあります。
しかし、どんな単純作業であっても、頭脳労働にしようと思えばできるのです。
改善点を常に考え、「どうすればこの作業の質をもっと高められるか」を追い求めれば、
その作業は頭脳労働となります。
逆に、知的な仕事でも言われたことだけをやっているなら、それは肉体労働でしょう。
そんなメッセージも事あるごとに伝えています。
新人時代に身につけた価値観や思考は変えにくいもの。
その事実を受け入れた上で、長い時間をかけて「価値観合わせ」と「文化合わせ」をして
向き合っていくことが、中途採用者のマネジメントには欠かせません。
(安東邦彦)