コンサルティング
フラットな組織を追いかけるだけでは何も変わらない
【関連記事】
中小企業ティール組織①
中小企業ティール組織②
中小企業ティール組織③
組織変革について突き詰めて考えていくと、
今社内で起きている問題は、見えている氷山の一角に過ぎないのではないかと感じます。
氷山の根っこにはどんな課題があるのか。
それを意識せずにただフラットな組織を追いかけるばかりでは、
結局何も変えられないまま終わってしまうことでしょう。
自社の課題は何なのか。
ティール組織に必要な要素には何があるのか。
そのうち、自社に足りていないものは何なのか。
こうした課題を認識し、そのために何をしなければならないかを知っていれば、
どんな会社でも変化を起こせるのです。
4回に渡ってお伝えしてきた『中小企業とティール組織』。
連載最後の記事は、どんな会社が変化を起こせるのか、何が必要なのかについて、
ティール組織を念頭に考えます。
「何となく遠いもの」になっているティール組織
『ティール組織』(フレデリック・ラルー著、英治出版)によると、
変化のために必要なことは3つの要素があるといいます。
それは、「存在目的」「自主経営」、「全体性」です。
「存在目的」とは、以前からお伝えしているように会社全体で進むべき方向性、「理念やビジョン」を指しています。
「自主経営」とは、現場の一人ひとりが環境の変化を機敏に読み取り、自主的に工夫している状態です。
社員一人ひとりが経営者の意識を持って働いている組織を指しています。
「全体性」とは、社員がありのままで居られる組織のことを指しています。
会社内のあらゆる場面において社員の個性を発揮できる状態があり、自分の個性を複数の分野で試す機会が提供され、それを応援、推奨する文化が根付いています。
ただし、注意点があります。
組織作りは掛け算である、ということです。
自主経営できる人が集まっても、存在目的がなければ、
掛け算の結果はゼロになってしまいます。
個人が全体性を発揮できる環境であっても、自主経営できる人たちの集まりでなければ、
同じように結果はゼロです。
どれか一つだけに取り組んでも、簡単に結果が出るものではないのです。
とはいえ、実際にその目で見たことがない方にとって、
ティール組織はなかなかイメージしづらいことと思います。
私も最初はなかなかイメージをもてませんでした。
書籍の中で、ティール組織の例として挙げられているのが、
アメリカのネット通販大手ザッポスです。
私は2011年に初めて訪問しましたが、最初は何が何だかわかりませんでした。
実際に見に行っても、ザッポスの組織のことが理解できなかったのです。
なぜこんなにも社員が自発的に働いているのか。
なぜこんなにも社内全体がイキイキとしているのか。
なぜ、なぜ……。
正直に言うと、目の前で起きていることが受け入れられなかったのです。
私が最初に訪問したときのザッポスは600人規模でした。
自社に取り入れようにも、「その人数だからできることなんじゃないか」など、
意味のない、できない理由ばかりが浮かんでは消えていました。
しかし、このままでは終われません。
翌年、もう一度ザッポスについての本を読み、研究してから、再び訪ねてみました。
そのときには、以前に比べてなんとなく理解できた気がしました。
こうして少しずつ理解を深めて行き、計4回足を運んでようやく、
ザッポスのことを理解するに至ったのです。
「こんな会社なら、業績が伸びないわけがない」という状態とは?
私のように、新しい組織のあり方を体現している企業を研究し、
できれば実際に足を運んで現場を見ることは、貴重な体験となるはずです。
ティール組織を理解させてくれた企業はザッポスだけではありません。
同じくアメリカのブランド「パタゴニア」と、流通大手「ホールフーズマーケット」も、
組織の新たな可能性を教えてくれました。
パタゴニアは落ち着いた雰囲気の企業で、
「地球環境のため」「社員のため」という目的を明確にして、
社会を変えるために取り組んでいます。
それを社員一人ひとりが理解して行動をしているという点で、
ティール組織に限りなく近いのではないかと思います。
ホールフーズマーケットも近いものがありました。
実店舗を展開し、オーガニックフーズを通じて社会をよくしていこうと取り組んでいます。
一人ひとりの社員に売場での明確な役割が与えられ、それを全体の本部が支えている。
まさに社員の自主性によって支えられている経営と言えるでしょう。
今挙げたどの企業でも、スタッフたちは誇りを持って現場で働いていました。
そんな会社の業績が「伸びないわけがない」と思いました。
これらの経験を経て、私はある考えにたどり着きました。
「現場のスタッフが、自社や自分のやっていることに誇りを持っている」ことこそ、
「変化から逃げずに、変化の中で目標達成できる会社」になれる条件ではないか、
ということです。
私個人は、結局のところ「グリーン組織」でも「ティール組織」でも、
どちらでもいいのではないか? という気がしています。
社員が会社に、仕事に誇りを持っている状態を作る。
そのために必要な組織のあり方は、会社によってさまざまだと思うからです。
変化から目を背けず、変化しながら目標達成していく。
これからの中小企業は、そうなっていくしかありません。
そうならなければ、つぶれていくだけです。
この現実を受け止めたとき、組織を変えることの重要性に気づくはずです。
あなたの会社は、いかがでしょうか。
(安東邦彦)