コンサルティング
大半の中小企業経営者は、「ビジネス=自分の人生」だと考えています。
つまり、ビジネスの成功が人生の成功だということです。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
ビジネスが成功すれば、経営者の人生のすべてがうまくいくのでしょうか?
実は、「ビジネスの成功=人生の成功」という考え方こそが
「ビジネスに振り回されてしまう原因」になっているのです。
そこで今回は、経営者が見直すべき
「ビジネスのスタート地点」についてお伝えしたいと思います。
経営者としての仕事を振り返る良い機会になるはずです。
■「人生の目的」から見えるビジネスの将来像
私がアメリカでマイケルE.ガーバーから指導を受けた際に言われたのが、
次の格言でした。
「ビジネスとは、自分を人生の目的地まで連れて行ってくれる乗り物に過ぎないのだ!」
つまり、ビジネスを成功させる経営者は、
自分の人生の目的を達成するためにビジネスを行なっているのであり、
ビジネスに人生をささげているわけではない、と言うのです。
例えば、将来的に築きたい資産を描いたなら、
どうすればそうできるのか? を常に考え、
その実現のための手段として、ビジネスを構築するということです。
「ビジネス=自分の人生」になってしまっている経営者は、
本来は人生を豊かにする手段であるはずのビジネスに自分の人生を振り回されており、
コントロールを失ってしまっている状態であることが多いのです。
また、ガーバーはこうも言っています。
「普通の人と功績を残す人の違いは、
人生を受け身で過ごすか、自ら人生を切り開こうとするかの差だ」
あなたの周りで何かを成し遂げた人たちは、
受け身の姿勢のまま、周りに振り回されていたでしょうか。
答えはノーでしょう。
目的や目標を明確に持ち、そこに向かって自ら行動した結果が、功績につながったはずです。
「起業をする」と決断した人たちは、
起業した瞬間は受け身ではなく、
自らの人生を切り開こうとしていたはずです。
しかし、仕事の厳しさに触れ、経営が甘くないことを知り、
いつの間にか自分の人生のすべてをささげ、自身をすり減らしてしまうのです。
以前の私もその1人でした。
何かに追い詰められるような感覚をもち、
仕事をしていないと不安で仕方がない状態に陥っていました。
結果、ビジネスを長期的な視野で考えることができず、
目の前の仕事に体力と精神を注ぎ込んでいました。
その泥沼から脱却するために必要なことは、
「経営者の人生の目的を明確にすること」だったのです。
■経営者の仕事の第一歩は「弔辞を書く」こと?
では、具体的には何から取り組むべきなのでしょうか?
アメリカでガーバーの講義を受けたときには、
まずは「自分で自分の弔辞を書く」ように言われました。
ご存じの通り、弔辞とは
自分が死んだときに友だちや親族が読んでくれるもの。
それを「自分自身でどのように読まれたいか」を考え、文章にするのです。
正直、私は戸惑いました。
「ビジネスを成長させたくてアメリカまで講義を受けにきたのに、
何で弔辞を書かなきゃいけないのか?
これが経営者の仕事なのか?」
と、内心思っていました。
しかし、とにかく今までの失敗を繰り返さないためにと、
言われるまま書いてみることにしました。
弔辞の書き方の本を買い、ネットで弔辞のサンプルを取り寄せ、
約2週間かけて、やっとの思いで書き上げました。
そして、その弔辞を自分で読み上げてみると、
不思議なもので胸が熱くなるのです。
それと同時に、「このままではまずい」とも思いました。
それは、
「このままでは自分で書いた弔辞を読まれるような生き方ができない」と感じたからです。
言うまでもありませんが、弔辞とは人生の最後に「自分について」読まれるものです。
・人生の中で何を大切にしていたのか?
・仕事仲間、家族、お客さま、地域社会にどのように関わってきたのか?
・金銭的に豊かだったのか?
・精神が充実していたか?
つまりそこには「人生をどのように過ごしたか」が表れてくるのです。
■人生の目標こそがビジネスの核となる
経営者の中には、ビジネスにすべてをささげてきたあまりに、
自分の人生や将来を描けなくなっている人もたくさんいます。
その状況から脱却するためには、
繰り返し自分と向き合い、理想の人生を考え続けることが必要です。
その繰り返しで、あいまいだった「人生の目標」が明確になっていきます。
だから、経営者の人生の目的や目標が明確にならない限りは、
「ビジネスの目的・目標」も決めようがないのです。
そもそも、あなたはなぜ自分でビジネスを始めたいと思ったのでしょうか?
・サラリーマンに飽き飽きしていたから?
・上司が気に入らなかったから?
・自分の好きなことを仕事にしたいと思ったから?
・もっと儲けられると思ったから?
・もしくは自由なライフスタイルを手に入れたかったから?
どんなことでも結構です。
とにかく、あなたの感じるまま、欲望のまま、理想のままに、
経営者の仕事の第一歩として「自分の弔辞」を書いてみてください。
私はアメリカでガーバーに、
「今のビジネスであなたの望む人生を手に入れられないなら、そんな事業はやめるべきだ」
とまで言われました。
あなたの人生の目的は何ですか?
あなたのビジネスは、あなたの人生の目的地まで連れて行ってくれそうですか?
自身の人生の目的を知り、未来を描くことは、
経営者の仕事の中でも最も重要なことなのです。
(安東邦彦)