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2019.02.14

コンサルティング

会社の「物語」を作るには?

安東 邦彦

あなたの会社の魅力は、何ですか?

 

改めて聞かれると、とまどってしまう経営者もいらっしゃるかもしれません。

また、既に自社の魅力を考えている方でも、もっとブラッシュアップできるはずだと

感じている方もいるのではないでしょうか。

 

こうした自社の魅力を発見して発信していくためには、

会社の「物語」を作ることが大切です。

過去の出来事や、今やっていることから、

自社の魅力を端的に表しているものを見つけ出すのです。

それを社内外で語ってアピールすることが、ファン獲得に繋がります。

 

とはいえ、言うのは簡単ですが、実践するのは難しいものです。

そこで今回は、自社の魅力を発信するための「物語」をどのように見つけるのかを、

いくつかの例を見ながら考えて行きたいと思います。

 

 

■スティーブ・ジョブズの「物語」

 

アップルの創業者である故スティーブ・ジョブズは、

製品の細部にまで徹底的にこだわったことで知られています。

 

彼は、ユーザーには見えない内部の電子回路にさえも、

性能だけでなく製品としての美しさを持たせられるよう追求しました。

 

機能には何ら問題はないのですが、

「美しくない」という理由で、エンジニアに何度も何度も作り直させました

こうして細部にまでとことんこだわってできあがった製品が、

世界を変えたあの「マッキントッシュ」だったのです。

 

アップル社にとって、これが自社の魅力を発信する「物語」の一つです。

「わが社の強みは……」などとアピールをしなくても、この「物語」を語るだけで、

「ユーザーの目に届かない部分まで徹底して品質にこだわっている」ということが

十分に伝わります。

 

これが、企業の魅力を発信する「物語」の一例です。

 

しかし、いざ自社のこととなると、

「そんな大層な物語はうちにはない」と考える経営者が少なくありません。

本当にそうでしょうか?

 

「物語」を見つける方法や考え方を知らないから、

今はそう思っているだけかもしれません。

 

 

■物語を見つけるための視点

 

自社の物語を考える上で、参考になる考え方があります。

 

著書『物語戦略』の中で、岩井琢磨氏、牧口松二氏は、

会社のエピソードが物語として成り立つ要件をマトリクスにまとめています。

「戦略に合致するか」と「人に話したくなるか」という2つの視点から、

「物語」を見ていこうとする考え方です。

 

例えば、先ほどのアップルの「物語」でも、

「スティーブ・ジョブズのこだわりが強かった」という話だけで終始するならば、

それは単なる「自慢話」になるかもしれません。

 

あるいは、単に「実は回路の見栄えにもこだわっています」という話で終始するならば、

「へぇ、そうなんだ」と、それは「トリビア」止まりになるかもしれません。

 

マッキントッシュの事例が「物語」になったのは、

それが「見えないところまで、こんなにも品質にこだわっているのか!」と、

「戦略に合致するか」と「人に話したくなるか」の両方の要素を満たしているからなのです。

 

このように、同じ話であっても、企業の強みを象徴する「シンボリックストーリー」から

「無駄話」にまでなり得ます。

 

「そんな大層な物語はうちにはない」と考える方も、

実はこのマトリクスを使って整理をすれば、

大きなヒントが見えてくるかもしれません。

 

 

■物語が「物語る」ようになるためには?

 

さらに、その「物語」の質を高める考え方もあります。

それは、オハイオ州立大学のジェイ・バーニー教授の提唱する

「VRIO分析」です。

 

VRIOとは、

 

V(Value:経済価値)

R(Rarity:希少性)

I(Inimitability:模倣困難性)

O(Organization:組織的活用)

 

を指します。

効果的な物語には、上記全ての要素があるのです。

 

図で表すと、以下のようにまとめられています。

すべての質問に「YES」と答えられるのが理想です。

このVRIO分析を使って、ある会社の事例を見てみましょう。

 

 

■かつての不良たちが勤める弁当屋

 

お弁当を作り、配達を手がけるA社では、ある共通点を持った社員が多く働いています。

それは、「かつての不良たち」なのです。

 

元不良といっても、彼らは筋を通します。

真面目に働いた結果、1日に約7万食を売り上げるまでに成長しました。

 

さらに、そのバイタリティや連携を活かして、高い需要予測を実現しています。

コンビニでは廃棄率が2~3%のところ、A社は脅威の0.1%を達成しているのです。

 

このA社を簡単にVRIO分析に当てはめて、考えてみましょう。

 

 

V(Value:経済価値):「うまい、安い(450円)、飽きない(日替わりメニュー)」

 

R(Rarity:希少性):高品質で安価な弁当を配達までしてくれる企業は、そういない

 

I(Inimitability:模倣困難性):廃棄率0.1%という高い需要予測

 

O(Organization:組織的活用):注文担当と配送担当同士の連携があっての実現

 

 

このように、会社の出来事が「物語」(シンボリック・ストーリー)となるのは、

こうした要素が絡み合ったときです。

 

どんな企業にも、物語は探せばあるもの。

もしなかったとしても、

上記のような分析によって足りないところを補っていけば、

会社の強みを新たに創出していくことだって可能なのです。

 

(安東邦彦)

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