コンサルティング
結婚や出産で会社を退職した女性たちが、その後、思うように働けていない……。
ずっと指摘されている日本社会の問題点は、
未だに改善されているとは言い切れません。
もちろん、産休・育休が充実した会社は増えつつありますし、
子育てが一段落した女性が職場復帰して、以前のように働くケースは多々あります。
しかしながら、そうなっていないケースもまだ多いのが現実です。
子育てをしながら働きたいと思っている女性はたくさんいるはずなのに、
そのニーズに十分に応える就労体制が会社側に整っているとは言い切れません。
その一方で、多くの企業は慢性的な人材不足に悩んでいます。
女性側は働きたいけど働けない。
会社側は働いてほしいけど子育て事情に対応できない。
実にもったいないことです。
近年、「人材確保」は重要な経営課題のひとつとしてあげられるようになりました。
それならば、女性が活躍できる環境を整えるのは、
中小企業にとって希望になり得る取り組みではないでしょうか。
こうした女性たちに活躍してもらうためには、
会社が既存の概念にとらわれず、発想の転換をする必要があります。
■子育てをする女性の「働きたい」実情
それでは、「働きたいけど働けない女性」はどのくらいいるのでしょうか。
下図は株式会社リクルートジョブズが行なった
「主婦の就業に関する1万人調査」からの抜粋です。
調査対象は20~49歳の既婚・子供ありの女性です。
現在就業しているかどうか、また就業意向の有無を聞いています。
上図によると、就業意向に差はありますが、
無業者のうち働きたいと思っている女性は過半数も占めているのです。
(22.5%+11.2%+17.4%=51.1%)
では、働きたいと思っている主婦が働けない原因は、何なのでしょうか。
それは、主婦が求める働き方と会社が求める働き方の間にギャップが存在するからです。
会社が求める働き方ははっきりしています。
「他の社員と同じように働いてほしい」というのが第一です。
一方、主婦はどんな働き方を求めているのでしょう。
■多様な働き方への要求は高まっていく
下図も上記調査からの抜粋で、
主婦たちがワークライフバランスをどう考えているかを聞いています。
上図によると、就業意向のない層を除くと、
「仕事と生活のバランスを取りたい」という希望がかなり多いことが分かります。
働きたくても働けない主婦は、現在会社が要求する就業条件では、
仕事と生活のバランスが取れないと考えているということでしょう。
また、「どちらかというと生活中心」と考える主婦たちも相当数いることも見逃せません。
もちろん、会社側も社員の働き方について考えを持っています。
主婦層が望む働き方と開きがあるなら、それは仕方ないと突っぱねることだって可能です。
しかし、冷静に考えてみてください。
今後、長い目で将来を見て、
いまこれだけ求められているワークライフバランスのニーズが減ると思えるでしょうか。
むしろ、多様な働き方への要求は
ますます高まっていく傾向が強まるに違いありません。
■働き方にまだまだ工夫の余地はある
では一体、主婦層が求める
「仕事と生活のバランスが取れた働き方」とはどんなものなのでしょうか。
再度、上記調査からデータを抜粋します。
主婦が仕事を選ぶ際の就業条件で何を重視するかを聞いています。
上図によると、働く場所に関する希望がトップ3となっています。
この点においては、会社と主婦の間で妥協の余地は少なそうです。
条件が合わなければ働かない、雇わないという態度がはっきりします。
一方、それ以下の条件では勤務する曜日、時間帯が含まれます。
ここではもう少し双方の歩み寄りの余地がありそうです。
つまり、働く曜日や時間帯を会社が工夫すれば、
より多くの人材を確保することが可能である、ということです。
また、上記調査によると、
現在の雇用形態の88%がパートだそうです。
そして理想の雇用形態の86.7%が同じくパートです。
これは現在の「正社員」という働き方が彼女達にとって
「理想の雇用形態」ではないことの現れです。
「正社員で」「他の社員と同じように働ける人」という今までの考え方にとらわれず、
お互いに利益がある雇用形態を新たに考え、取り入れてみてはいかがでしょうか。
(安東邦彦)