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権限委譲は、中小企業成長に欠かせないものであり、逃れられないものです。
しかし、「方法がわからない」「任せられる人材がいない」などの理由から行動をためらってしまう経営者も少なくありません。そこで今回は、そんな経営者様のために権限委譲達成の最初のステップについて詳しくご紹介させていただきます。
会社成長を目指している経営者であれば、成長のために権限委譲を行なおうと考えたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、いざ行なおうとすると「方法がわからない」、「委譲できそうな人材がいない」などの理由から、行動に移すのをためらう方も少なくありません。権限委譲をすることで、会社が成長することができるという確信があるにも関わらず…です。これは、とても残念なことです。
いわば権限委譲は中小企業成長を左右する最初の壁となってしまっているのです。
そこで今回は権限委譲の最初のステップのひとつである「組織図」についてご紹介します。現在、権限委譲を行なおうと考えている方も、今後行なっていこうと検討している方も是非ご一読いただけますと幸いです。
【なぜ、権限委譲のために組織図が必要なのか?】
組織図は権限委譲を行なう上で、不可欠なものだと私は考えています。
それは、組織図には「どんな機能が必要なのか」「誰に何を任せ、責任を持たせるのか」が凝縮されているからです。それでは、まず、組織図の重要性についてご説明させていただきます。
あなたは組織に問題が発生したとき、どんな原因を考えるでしょうか。
「担当者の技術不足だ」「メンバーが積極的になってくれないからだ」「自分の目配りが足りなかったからだ」など様々だと思います。
中小企業経営者はこういった場合に、「人に原因がある」と考えてしまう傾向があります。
それは、中小企業の場合、人数も少なく個人の行動や能力に目がいきやすいという環境の影響もあるかもしれません。
そして、大抵はその後「うまく指揮できないのは、自分の指導力が足りないからだ。自分は社長の器ではないのだ」と自分を責めてしまいます。
このような状態に陥り、自信をなくした経験がある方は少なくありません。私自身も以前は同じように「経営を辞めよう」と考えたことが何度もあります。
しかし、原因は部下でもメンバーでも自分でもありませんでした。
組織で起こるあらゆる問題は、システムの不足もしくは、システムの不全にあるのです。つまり、それらは全てシステムの改善によって解決することが出来ることだったのです。
では、システムとはどういうものを指すのでしょうか?
システムは、“複数の要素が体系的に構成され、相互に影響しながら、全体として一定の機能を果たすもの”です。これではよくわかりませんので、身近なところから例をあげてみます。
例えば、オートバイは、タイヤ、マフラー、ハンドル、メーターなどの部品を組み合わせて構成されたシステムです。
それぞれの部品が、それぞれの役割を果たすことで、“乗り物”としての機能を発揮し、100キロのスピードで走れたり、カーブを曲がれたりするのです。
このような視点で組織を見ていくと、営業部、総務部、経理部、法務部、経営戦略室、人事部など、それぞれの部門が、それぞれの役割を正しく果たすことができれば“会社”として機能を発揮して、成長し続けることが出来るのです。
【組織図を作成する】
組織図の重要性はご理解いただけましたでしょうか。
次は、組織図の作成についてご説明します。
部門が正しく役割を果たし、成果を出し続けるためには、そのための機能が必要であり、他の機能と正しく組み合わさっていなければなりません。そのためには精密な設計図が必要です。それは、オートバイが正しく機能するためには、精密な設計図が必要なことと同じです。そして、組織の設計図としての役割を持つものが、“組織図”なのです。
組織図は社員数の大小に関わらず、どんな会社にも不可欠なものです。例え、今は社員を雇っていなくても、今後雇いたいと考えるのであれば、今の段階から作りこんでおくことをお勧めします。
しかし、「少人数や社長1人の会社にも組織図が必要」と言うと、多くの社長が困惑します。その理由は、組織図を「誰に何を担当させるかを明記するもの」というように人中心に考えているからです。会社の発展に影響を与える組織図とは、人ではなく、純粋に「目指している会社にするためにはどんな機能が必要か」というようにシステムに注目して作成する必要があります。
《組織図作成手順》
1.理想の会社にとって必要な機能を洗い出す。
2.ひとつひとつの機能に責任者・担当者を割り振る
会社で繰り返し起きている問題には、機能自体がなかったということがあります。例えば、「人が育たない」という問題であれば、「人材育成」の機能がないか、そこに責任者がいない場合が多くあります。一度作成し、自社の構造を客観的に見ることで新たな発見があるかもしれません。
さらに、組織図を作成した方に活用を高めるツールとして作成をおすすめしているものがあります。それは「成果定義文」です。
これは、組織図のひとつひとつの機能に対して「どんな役割があり、どんな成果が求められているのか」を明記した文書です。例えば、「マーケティング企画部門」であれば下記の通りになります。
《役割》
マーケティング企画部門
《成果》
「ビジョン達成」に向けて、より多くの顧客に価値提供するためのマーケティング戦略を立案~実施までを行ない、ファンを増やす
これを作成し、組織図と合わせて渡すことで社員は自分の責任や、やらなければならないことが明確になります。「任せてはみたものの、期待とは全く違う成果しかでてこない…、望んでいたものとは違う」という経営者と社員の誤差を防ぐことが出来るはずです。このことこそが、権限委譲に必要な最初のステップなのです。
私たち経営者は、成長を続ける組織を常にイメージしていかなければならないのはもちろんですが、そのイメージを実現する為に必要な部門と、その部門がどうしたら役割を果たし続けることができるのかも同時に考え続けなければなりません。
最初は、立派な組織図に、責任者も担当者もすべてあなたの名前が記入されているような状況になってしまうかもしれません。
しかし、この組織図があることで、権限委譲までの道筋がとてもクリアになるはずです。それだけではなく、社長の理想から逆算して組織をつくることもできます。3年後、5年後の組織図を描くことで、会社の未来像を明確にすることまでできるのです。
多少の夢、希望も含みながら、システムに注目した組織図をつくってみてはいかがでしょう。あなたの会社が目指している未来像が具体的になるはずですし、あなたの会社が成長する第一歩になるはずです。
例:「システム」という視点で作成した組織図(社員7名)
【組織づくりの基本は、職人社長からの脱却】
私がセミナーなどで、「個人の能力に依存しない組織づくりが必要だ」という話をすると、同意しない社長はほとんどいません。
しかし、「社長は現場の仕事から離れる努力をするべきだ」という話には、苦悩の表情を浮かべます。
「私が現場を離れるのはちょっと難しいですね。」
「うちの業界はちょっと特殊だと思うのですよ」
と、怒り口調で言う人もいます。
そこには、「社員が入れ替わっても回る組織にしたい」という思いと、「自分は現場を離れられない、離れたくない」という思いが交錯しています。
つまり、組織として機能したいが、自分の能力には依存して欲しいのです。
この矛盾こそが、社長を苦しませている元凶だと気づくのに時間がかかります。
確かに、現場に立って、自分が中心で活躍
していることはやりがいもあり楽しいと思います。しかし、あなたが現場で活躍する限り、あなたの会社が成長することはありません。
あなたの周りの成長している会社を思い浮かべてください。
楽天の社長がネットショップの営業をしているでしょうか?
日本生命の社長が、社員と同じ仕事をしているでしょうか?
イトーヨーカドーの社長が、店舗に張りついているでしょうか?
だからこそ、あなたが「現場から離れられない」と口にすることは、「成長しない会社です」と宣言したのも同然になってしまうのです。
そして、社員の立場から状況を見てみると、更にわかることがあります。
・あなたが社員の立場なら、社長が現場から離れない会社で働きたいと思いますか?
・成長しない会社をわざわざ選んで就職しますか?
全て答えは「No」だと思います。
本気で成長する企業を目指す社長は、現場から離れる寂しさやジレンマから脱出し、現場から離れることに心血を注ぎ続けています。現場から離れるということは権限委譲なしには実現しません。まずは、現場から離れる決意を固めることが大切なのではないでしょうか。
あなたがどんなに現場が好きでも、あなたがどんなにお客様を愛していても、あなたが創り上げたサービスや商品をより多くの人に届けたい、より多くの人の暮らしに役立だててもらいたいと考えるなら、やるべきことは決まっています。是非、時間をとって成長の為の組織図作成に挑戦してみてください。