コンサルティング
今回のブログでは、事業継承について焦点を当てます。親族内承継の減少の理由を考え、他の方法も含めて解決策を模索していきたいと思います。
事業承継は経営者にとって大きな課題であり、これまで育ててきた事業が自分の代で終わるのか、他の人に受け継がれて生き続けるのかという選択は経営者だけでなく、従業員、家族、取引先など関係者に大きな影響を及ぼします。
事業承継は、経営者の思い通りに進むことが難しい現実があります。
これまで一般的だった親族が事業を引き継ぐやり方が減少している中で、親族内承継以外の方法も広く探り、柔軟性を持って臨むことが必要です。
まず確認しておきたいのは、事業承継がどのように行なわれているか、その実態です。
下図は帝国データバンクが行なった「全国『後継者不在企業』動向調査」からの抜粋です。事業承継後の会社の現代表がどのような経緯で就任したかを聞いています。
(対象約27万6000社)
上記調査によると、事業承継の形態のうち、同族承継が40.3%と一番高い割合を占め、親族内承継に対するニーズが未だに高いということがわかります。
一方で、「創業者」というのはわかりづらいので説明が必要です。
これは、一度社長職から代表権のない会長職などに退任したものの、後継候補の育成が間に合わなかったり、相応の人材がいなかったりしたことで、再び社長に復帰したというケースです。
事業継承の現状を考察すると、同族承継が主流であることは確かです。
しかし、同時に創業者が再び代表者になるケースが増えており、世代交代が進んでいない実態が浮かび上がります。
これは高齢が原因で引退した経営者が後継者不足のために再び復帰する事例も含まれており、慎重な検討が求められます。
そうした状況を踏まえた上で、「代表就任の経緯」を近年にフォーカスを当てて見ていくと、また違った様相が露わになってきます。
下図は帝国データバンクが16年以降に事業承継が判明した企業約3万5000社の社長について、先代との関係を調査した結果です。16年から18年までの推移も併記しています。
上図によると、「同族承継」が16年~18年の間にその割合が低くなっていることがわかります。
低くなったとはいえ、36%が同族承継です。未だそのニーズは高いと言えます。
しかし同時に、「内部昇格」が微小ながら、年々その割合を高めていることがわかります。
18年には32%に達しており、同族承継の36%に迫る勢いです。内部昇格とは、親族以外の従業員など社内の人材が事業を承継することです。
他方、創業者が代表者に復帰するケースが増えているのが気になります。これは後継者を親族に限って選定しているためではないでしょうか。
事業承継の問題は一つとして同じものはなく、個々の会社の事情を見極めて適切な処置を早めにとることが大切です。その際、親族外承継も視野に入れてみることが必要です。自社の個性や事情に合わせた柔軟な戦略を検討しましょう。
(安東邦彦)