YouTube
今回のテーマは「うちの社員は“レベルが低い”が口癖の経営者が陥る罠とは」です。
クライアントから「私の会社の社員は経営のことなど分からないので、会社の未来について話し合うことは出来ないと思います。そんな時は、どうすればいいですか」とご相談をいただきました。私は兼ねてより「会社の未来について社員と話し合うこと」を勧めているのですが、社員のレベルが低いためにそれが難しいというのです。
実は私も、一時期同じように考えていました。しかし社員を経営に巻き込んでいくには、段階を踏むことが大切なのです。私の失敗談も交えながら、そのプロセスをご紹介していきます。
私が今回のご相談者様と同じように考えていたとき、社員が成長するまで会社の未来について話すのは待とうと思っていました。しかしマイケル・E・ガーバー氏と出会ったことで、自分の考えが間違いだったことに気づかされたのです。
社員は放っておいて勝手に育つものではありません。社員のレベルが低いのは、実は経営者が成長の機会を与えられていないからなのです。経営者が理想を描き、それを社員に伝えていくことをしなければ「この会社が何を目指しているのか、何をしたいのか」を理解できるわけがありません。
もちろん、初めからすべて理解できる人などいないでしょう。しかし会社の理想や未来について話す機会を繰り返し設け、4~5年経った頃から、ようやく社員も同じ目線で考えられるようになってきたのです。
当時を振り返ると、私は社員に間違ったメッセージを発していたと感じています。一部の幹部社員にだけ会社の経営や未来の話をしていましたが、そのことが「幹部社員以外を大切にしていない、信頼していない」というメッセージになってしまっていたのです。
社員のプレッシャーになってはいけないという思いからだったのですが、何も教育せずに放置していたわけですから、今思えばとても無責任だったと反省しています。
会社のことを一緒に考えてほしいのであれば、一緒に考えていけるような教育を経営者自身がしなければなりません。しかしいきなり経営の話をしても、ピンと来ないのは当たり前です。そのため、いくつか段階を経ていく必要があります。
会社の未来や経営の話に興味を持ってもらうために、まず社員が会社のことを好きになるような取り組みをしていきましょう。会社が好きで「自分の居場所だ」と感じられたなら、その居場所が将来どのようになっていくか気になるはずです。
ブレインマークスの場合、社員が会社を好きになる鍵は「お客様との関係」だと考えました。お客様と良い関係を築き、お客様から感謝されることで、社員が会社を好きになってくれるのではないかと思ったのです。そのため私は、社員に会社の未来について話をする傍らで、お互いWin-Winの関係になれるような良いお客様を選んできました。そしてお客様との間で社員がどのように活躍できるかということを、懸命に考えたのです。
すると徐々に、社員が会社の未来の話に真剣に耳を傾けてくれるようになってきました。そうすれば、今度は経営の計画づくりに巻き込んでいきます。そして計画づくりに携わったあとは、そのチェックにも巻き込み……といった具合に、少しずつ会社経営に参画させました。このように、4~5年かけて段階的に社員が成長するプロセスをつくっていったのです。
「社員のレベルが低いから、成長したら会社の未来について話そう」という考えは間違いです。もし自分の会社の社員はレベルが低いとお考えであれば、それはあなた自身に責任がある可能性があります。
成長する機会を社員に与えられるのは、経営者しかいません。はじめは分からなくても、会社の未来を話す場に社員を同席させてみてください。それがまさに「教育の機会」になります。社員が勝手に成長するのを待つのではなく、まずは経営者自身が積極的に社員を教育していく姿勢を持つようにしましょう。