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今回のテーマは「前はこうだったと主張するモンスター社員」です。先日、クライアントの方から「前の会社と今の会社を比較する社員のことを理解できません。会社の周りの人間に悪影響が出ないか、とても心配です。どうしたらいいでしょうか?」とご相談をいただきました。経営者としては、このような社員にどう対処するか、方針を決めておきたいものですよね。
そこで今回は、対処法だけでなく、なぜ社員がこういった行動に出るのかについても考えていきましょう。
前の会社と今の会社では文化が違うのだから、比較対象にならないのは冷静に考えれば分かるはずですよね。ここで不可解なのは、前の会社から変化を求めて転職してきたはずなのに、なぜ元の状態に戻ろうとするのか、ということです。
そう考えてみると、なにやら違う理由も見えてきそうです。
あらためて考えてみると、中途で入ってきた社員は前の環境に戻りたいのではなく、新しい環境への変化を受け入れることに戸惑っているだけなのかもしれません。
変化を受け入れるステップとしてよく参考にされるのが「チェンジカーブ」です。
これはアメリカの精神学者、エリザベス・キューブラー・ロスの研究が元になっています。人が変化を受け入れるプロセスが、細かく明確に示されているものです。
今回は、その内容をざっくりと紹介していきましょう。
人は変化に直面すると、まず「拒絶」してから「抵抗」します。その後、少しずつ変化を受け入れなければならないと「覚悟」を決め、最終的に変化を受け入れます。
多少の個人差はあれ、これが多くの人の「変化のプロセス」です。
この理論を理解していると、「前はこうだったのに…」という人が、まさに変化の真っ最中であるのだとわかります。
これだけでもだいぶ見方が変わりますよね。
私もそうですが、人間は簡単には変われません。理屈を「わかる」のと、実際に「できる」までには時間差があります。
人によってこの時間差の程度は違うので、ある程度、余裕をもってみておきましょう。
「拒絶」「抵抗」の期間、さらには「覚悟」から「変化」までの期間をどうやって乗り越えていくのか。
リーダーや経営者の方はたえず考えていかなければなりません。
そのためには、定期的にコミュニケーションの機会を持ち、本人の戸惑いを解消していくアプローチが必要だと、私は思っています。また、これから起こる変化について、経営者側の理解が不足していると、社員が変化に抵抗する要因になりえます。それを防ぐためにも、しっかり「チェンジカーブ」を知識として理解しておくことが重要です。
ここで一番やってはいけないのは「拒絶・抵抗をしている社員の話をそのまま受け入れて、会社の文化や、やり方を変えること」です。よほどの事でなければ絶対に変えてはいけません。
会社が描いている未来へのアプローチ方法を変えるのは良いのですが、会社としてのあり方を変えてしまうのは望ましくありません。
変わるのはあなたであって、会社ではない。このメッセージを伝え続けることこそが組織を守り、中途社員の変化を促す大切なポイントなのです。
すべての社員がモンスター社員というわけではありません。
変化に対応しようと頑張っている社員には時間を与え、対話をしてみてはいかがでしょうか。
きっと皆さんが抱えているフラストレーションが少しずつ減っていくはずですよ。