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今回のテーマは「良質な商品が売れない理由」です。
「社会にとっても顧客にとっても価値の高い商品を開発できたのに、売れません。絶対に需要はあるはずなのに、なぜ売れないのでしょうか」というご相談をいただきました。顧客の課題を解決しようと必死に取り組んできたそうなので、おそらく本質的なことをしっかりされている誠実な会社だと思います。
それにも拘わらず商品が売れないのは、もしかすると「本質的なことをしっかりしている」からかもしれません。一体どういうことなのか、順を追ってお話していきます。
まず理解しなければならないのは、顧客には次の2種類のニーズがあるということです。
・顕在化ニーズ…既に見えていて「今すぐ何とかしたい」という欲求
・潜在的ニーズ…顧客の奥底にあり、自身も気が付いていないため「今すぐ解決する理由がない」欲求
この潜在的ニーズにアプローチすればするほど、商品は本質的なものになります。しかし顧客自身がニーズに気付いていないために必要性を感じられず、良質な商品なのにも拘わらず売れないという結果になってしまうのです。
今回のご相談者さんの商品も、潜在的ニーズにアプローチして本質をしっかりお伝えするものなのかもしれません。これは、真面目で誠実な中小企業だからこそ陥りがちなことだと思います。真面目で誠実であるが故に、初めから本質を語ってしまい売れなくなるのです。
たとえば「トレーニングジムに週3回通い、1年間厳しいトレーニングをすれば必ず痩せます」と聞いて心が動くでしょうか。言っていることは間違いありませんが、それよりは「週1回通って痩せられます」と言われる方が、ハードルが下がって「やってみよう」という気になるかもしれません。
人間は基本的に、本質から逃れて楽に目標を達成できる方法を探してしまうもの。そのため、初めから本質部分にアプローチをしても心が動かないのです。
本質自体は非常に大切なので、その部分にアプローチすることは間違っていません。ただし、まず顧客に関心を持ってもらわなければ意味がないので、初めは「わかりやすいニーズ」からアプローチすることをおすすめします。
たとえばブレインマークスの場合、クライアントにいきなり理念を作る大切さを語っても初めはなかなか興味を持ってもらえないでしょう。本質的な部分を「自分事」として捉えられていないからです。
それでは「社長が3ヶ月不在でも成長する会社をつくりませんか」と言うとどうでしょうか。いきなり「理念やビジョンを作りましょう!」と言われるよりも興味が湧いてきませんか?
このように、まずは顕在ニーズをクッションにして、潜在的ニーズを引き上げていくのです。顧客のニーズが少しずつ本質へと近づいていけば、良質で本質的な商品の魅力にも気が付くのではないでしょうか。
どれだけ良い商品であっても、関心を持ってもらえなければ売れません。本当に本質的なものをお伝えしたいと思っているのであれば、そのニーズを啓蒙していくプロセスを作ることが肝要です。まずは浅いニーズから刺激して最終的に本質へ届くようなマーケティング設計をしていくと、きっと変わってくるのではないかと思います。