コンサルティング
ブレインマークスでは、これまで広告宣伝費に割いていた予算を人件費や採用・教育費に振り向け、大胆な投資を続けています。
なぜなら、私たちが必要とする人材を迎え入れるためには大きな投資が必要であり、その投資こそが将来を見据えて最も重要であると判断しているからです。
しかし、コンサルタントとして多くの中小企業と接している実感としては、残念ながら人件費や採用・教育費に投資することの重要性に気づかず、無駄な投資を続けてしまっている経営者も少なくありません。
また、必要な投資を決断するためには十分な収益が必要ですが、現状の収益構造そのものが「あるべき姿」になっていないケースも見受けられます。目の前の売り上げを必死に追いかけなければならない状況では、大胆な投資判断はできないでしょう。
ブレインマークスの創業当時を思い出してみても、当時は広告宣伝費を削って人件費に振り向けるなど考えられませんでした。
中小企業の経営者は、自社のコスト構造や収益構造をどのように捉えていくべきなのでしょうか。
昨今バズワードとなっている「DX」(デジタル・トランスフォーメーション)にも、無駄な投資を加速させてしまう落とし穴が潜んでいます。
働き方改革が大切であることはもちろん、その過程においてデジタル化が重要になる可能性が高いことは否定しません。
しかし、中小企業におけるDXは影響範囲が限られることも事実です。
大企業は小さなコスト削減の積み重ねが大きな結果につながりますが、中小企業の場合はそうでもありません。事務スタッフが1人でやっている作業をRPA化しても、コストは大して変わりませんよね。
イニシャルコストが低いからといって大局観なくツールを導入すると、いつの間にか無駄な投資を積み重ねる結果となってしまうかもしれません。
また、コスト構造を考える前に、自社の収益構造そのものを見直すことも重要だと思います。
私は個人的に、中小企業の多くは「商品・サービスの提供価格が安すぎる」と感じています。安くて良いものを提供することが正義、という神話にとらわれすぎていないでしょうか。
安くて良いものを作る努力は大切かもしれませんが、良いものを作ろうと思えばコストが高まることも事実。当たり前の話ですが、コストをかけてエンドユーザーに良いものを提供するのであれば、それに見合った適正価格を設定しなければなりません。
場合によっては、顧客に値上げを呑んでもらう必要も出てくるでしょう。価格の見直しを提案するのは簡単ではありませんが、覚悟を決めて向き合うべきだと思います。
大切なのは、自社と顧客がWin-Winの関係であること。顧客の期待に応えようとして過大な対応をし、採算が合わなくなってしまうことはよくあることですが、そのままではWin-Winとはほど遠い状態に陥ってしまいます。
今後も良い商品・サービスを提供し、レベルアップを続けていきたいと思うのであれば、尚の事Win-Winであることを強く意識すべきでしょう。
適切な収益構造を維持し、無駄なコストを見直して人材に投資していく。このグッドサイクルを回していくことが、これからの中小企業経営には欠かせません。
(安東邦彦)
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