コンサルティング
今回のブログでは、経営者の本質的な役割について考えたいと思います。
一口に経営者の仕事と言ってもさまざまな側面がありますが、最も大切な仕事は「人を幸せにする」ことではないでしょうか。
仕事とは本来、人様の役に立ってこそ価値を持ちます。人様の役に立って初めて報酬を受け取ることができます。これはどんな仕事であっても同じです。
経営者の仕事は、やりようによってこの「人様の役に立つ」をより主体的に、より深く、より広範囲に行ない得るものだと考えます。
翻って個人としての人生の目的を考えるときにも、「幸せになりたい」と答える人は少なくないでしょう。
何によって幸せを感じるかは人それぞれ。人の数だけ幸せの形があります。しかしながら、人が幸せを実感するための条件を考えていくと、そこには一定程度、多くの人に共通する要素もあるのではないでしょうか。
やりがいのある仕事をしている、楽しく暮らしていけるだけのお金がある、人間関係が充実している……。
今回は、そうした「人の幸せ」をキーワードに経営を考えていきます。
人の幸せを根本に置いた経営と、そうではない経営では、生まれる発想も、企業として成し遂げられることのレベル感も大きく変わってくるのです。
まずは、日本企業で働く人がどのくらい幸せを感じているのかを確認したいと思います。
世論調査およびコンサルティングを行なうアメリカの企業ギャラップ社の調査を参照します。
下図は、同社が行なった「State of the Global Workplace Report」からの抜粋です。社員の会社に対するエンゲージメント度を主要7カ国で比較しています。
ここで「エンゲージメント」について説明しておきます。一般にエンゲージメントは「婚約」や「約束」を意味します。
社員エンゲージメントとなると、「会社に対する信頼関係や愛着心」となります。仕事に対するワクワク感や幸福感、待遇の良さも含めた概念だと考えていいでしょう。
上図によると、日本は「エンゲージメントが高い」が7カ国中で最下位の7%という結果に。
社員の幸せを考えるとき、これは由々しき事態です。
この状況は会社にどんな事態を突きつけるでしょうか。
再び上記調査を参照します。エンゲージメントが高い集団と低い集団を比較してみると、さまざまな指標で違いが出ていることが分かります。
下図はエンゲージメント上位集団が示した業績評価指標です。
上図によると、エンゲージメントが高い集団が高いパフォーマンスを発揮していることは明らかです。
生産性、収益性、顧客評価を低い集団と比較すると、それぞれ21%、22%、10%も高いという結果です。
また、リスクマネジメントにおいても、エンゲージメントが高い集団は会社にとってありがたい存在。
上図は、エンゲージメントが高い集団は、欠勤することも、安全に関する事故を起こす可能性も低いことを示しています。
これらの数字は、経営者が社員とどんな関係性を築くかを考える際に、とても参考になる指標だと思います。
ここまで会社と社員の関係を検討してきました。
ではどうすれば、社員は会社に高い愛着を持つようになるのでしょうか。
それを知ろうとするとき、世界158カ国で会計監査等の業務を提供しているプライスウォーターハウスクーパース社の考え方が参考になります。
同社は社員のエンゲージメントは8つの要素から構成されると定義しています。以下がその構成要素です。
上図をみて、経営者のみなさんは何を思うでしょうか?
どの項目で十分に達成できていて、どの項目で不十分でしょうか。これらの項目を満たしていけば、社員のエンゲージメントが高まる可能性は高いのです。
しかしここで注意したいのは、エンゲージメントの高さは社員の幸せ度を測る一つの要素ではありますが、すべてではないということです。
社員の幸せ度を高めるために、経営者はどんなことができるでしょうか。
(安東邦彦)