コンサルティング
新型コロナウイルスの影響でテレワークが広がる中、オフィスのあり方が見直されつつあります。
従業員がさまざまな場所に散らばって働くことで、オフィスの稼働率が大きく低下しているという企業も少なくないでしょう。
こうした状況の中、従来のオフィスを廃止して「サテライトオフィス新設」や「コワーキングスペース+在宅勤務の組み合わせ」を進める動きが見られるようになりました。
また、ベンチャー企業の例では「本社を含めてオフィス自体をすべてなくしてしまう」といった思いきった決断も。
オフィスがないということは、採用段階において「勤務地」の概念がなくなるということでもあります。働き方の常識が大きく塗り替わりつつあるのは間違いありません。
こうした変化の多くは、固定費削減を目的としたものでしょう。
中小企業でもオフィスの価値を再考している会社は少なくないと思います。大企業と比べて身軽な中小企業だからこそ、見直しは比較的容易だと言えるのかもしれません。
しかしオフィスには、単純に経費面だけで切り捨てることのできないメリットが存在することも事実です。
オフィスはもういらないのでしょうか? それとも、これからも必要なのでしょうか?
中小企業が考えるべき「これからのオフィスの意味」について述べたいと思います。
世間の流れとは逆行しているようにも思うのですが、実はブレインマークスは2021年春にオフィスを移転する予定です。それも拡大移転です。
理由は単純で、会議室のスペースが不足してきたから。
ここ1〜2年は、クライアントを自社へお招きする際や、オンラインで打ち合わせを行なう際に使用する会議室スペースが慢性的に不足気味で、社員には窮屈な思いをさせてしまっていました。
こうして少し広いオフィスへの移転を決断するくらいですから、私自身はオフィスを「まだまだ重要で、意義のある場所」だと考えています。
もちろん最大限の感染防止策を取ることが前提ですが、私はできる限り、オフィスで働くことを大切にしたいと思っています。
もちろんブレインマークスのクライアントの中にも積極的にリモートワークを続けている企業はあります。そうした企業においては、オフィスが不要になりつつあるのかもしれないと感じています。
しかし中小企業の多くは、コロナが一段落した後にも、オフィスの意味は決定的には変わらないと思うのです。
オフィスというものの意味を考えるとき、私は固定費などの数字ではなく、「社員の成長」という観点で考えるようにしています。
マズローの欲求段階説になぞらえて考えてみましょう。
中小企業で働く人の多くがまず満たされたいと考えるのは「生存欲求」でしょう。安定した雇用契約のもとで、安定した収入を得ることがまずは第一です。
次に「社会的欲求」。これは、職場の同僚や先輩・後輩など、好きな相手とともに働いたり話したりすることで満たされるものです。
そしてもう一つ挙げられるのは「承認欲求」です。働くからには誰しも、できることを増やして自らの価値を高めたいと考えているはずです。
根底にある生存欲求は、オフィスのないリモートワーク環境であっても、会社が機能している限りは満たされるでしょう。
しかし社会的欲求については、リモートワークにおけるコミュニケーションのあり方が課題となっているように、離れた環境で満たしていくことは困難。
承認欲求をリモートワーク環境で満たしていくことは、さらに難しいかもしれません。
社員の成長とオフィスにおけるコミュニケーションは、どのように関連しているのか。
次回はこの点を詳しく考えたいと思います。
(安東邦彦)