コンサルティング
人手不足が深刻な昨今。
中小企業にとって、人材確保は死活問題です。
そんな中、さまざまな理由で会社を去っていく人が
後を絶ちません。
できることなら、会社に残って仕事に真剣に向き合い、
成長していってほしいところです。
では、そのために経営者は何をすればよいのでしょうか。
もっと社員の給料を上げればよいのでしょうか。
もっと人を雇って、社員の負担を軽減すればよいのでしょうか。
しかし、それは必ずしも得策とは言えません。
「もっと給料を上げてほしい」
「もっと楽に仕事をさせてほしい」
その欲求が小さくなることはないからです。
そこで今回は、
「会社に誇りを持てているか」
というテーマを考えてみたいと思います。
「この会社で働けることが、私の誇りです」
心からそう思っている社員が、果たして会社を辞めるでしょうか。
きっと彼らは、会社に対して愛着を持ち、
辞めるどころか自発的に働いてくれるはずです。
こうした誇りはどのようにして醸成すればよいのか、
一緒に考えていきましょう。
■会社への誇りはあるか?
まずは現状を確認するために、
誇りに関する社員の意識調査を見てみましょう。
図はタワーズワトソンが行なった
「持続可能なエンゲージメント(会社への自発的貢献意欲の持続性)が会社の業績に及ぼす影響」についての調査からの抜粋です。
現在の会社で働くことを誇りに思っているか否かを聞いています。
図の通り、誇りに思っている人は半数に及びません。
グローバルでは7割を越えている中で、
自分が属する組織に対して誇りを持っている日本のビジネスパーソンの割合は
決して高いとは言えないことが分かります。
■誇り=仕事の満足度?
会社に対して社員が誇りを持っていれば、離職率は下がります。
新たに社員を採用するコストが抑えられ、
末長く働いてもらえることで熟練の社員も増えていきます。
これだけでも、経営者にとって「社員の誇り」が
いかに重要な経営課題であるかがご理解頂けると思います。
ところが、社員の誇りが重要であることは分かっていても、
「誇りを育むために具体的な行動をしているか」というと、
なかなかそうではない経営者が多いようです。
なぜなら、
「社員が仕事に満足していれば誇りは自然と醸成されていく」と考えがちだからです。
本当にそうでしょうか?
給与が高かったり労働条件がよかったりすれば、
仕事満足度は上がって行くかもしれません。
しかし、だからといって社員が自発的に「会社のために」「自分のために」と
行動できるようになるかどうかは、別の問題です。
社員の仕事満足を高めることが悪い、と言っているわけではありません。
ただ、社員がいまの仕事に充足を感じていたとしても、
それがそのまま誇りにつながるわけではないのです。
■会社への誇りを育むには?
それでは、社員の誇りを育む条件とは何でしょうか。
リクルートマネジメントソリューソンズが行なった
エンゲージメント(会社との信頼関係)に関する調査結果から、
考えてみましょう。
調査では、会社と仕事のそれぞれに対して
「誇りをもっているか?」という質問の結果から、
エンゲージメント(会社に対する思い入れや愛着心)の強さを測っています。
その調査結果の一部を見ると、誇りに関係性の強い要素がわかりました。
下図は調査からの抜粋です。
【図2】「会社への共感」「成長実感」「安心感」とエンゲージメントとの相関
※相関係数は-1から1の間の数値であらわされ、絶対値が大きいほど関係が強いことを示します。
上図によると、会社に対する誇りは、
「安心感」や「成長実感」よりも、
「会社への共感」のほうがより強い相関性を見て取れます。
つまり、会社に対する誇りを持たせるためには、
「会社への共感」を高める必要があるということです。
この「会社への共感」をするためには、会社に以下の3つの要素が必要です。
①会社の未来に魅力的な物語があること
②会社に他と異なる点があること
③他者の人生をより良いものにするために役立っていること
つまり、「この会社の未来は明るいな」と思えるかどうか、
周りに自慢したくなるような企業風土があるかどうか、
そして、自分の仕事や会社がやっていることで他の人が喜んでくれているのを
実感できるかどうか、が重要なのです。
これらすべてを一言で表したものが、会社にあります。
それが、「経営理念」です。
つまり、上記3つの要素を満たし、「会社への共感」を実現させていくためには、
会社の経営理念を社員に浸透させていくことが効果的なのです。
経営理念は、朝礼でただ唱和するだけでは不十分です。
社員一人ひとりときちんと向き合って、
経営者の考えと社員の考えをお互いに理解し、深め合っていくことが大切です。
「この会社で働けることが、私の誇りです」
社員から自然とそう言われることを想像してみてください。
これ以上にうれしいことはありません。
あなたの会社の経営理念は、社員に浸透しているでしょうか?
また、そのためにあなたはこれから何に取り組むでしょうか。
このブログをきっかけに、考えていただければ幸いです。
(安東邦彦)