■安東の経営者ヒストリー 〜金を稼ぐためだけに会社を続けるのか?
社長の安東から高いレベルの仕事を要求され、厳しい言葉や、ときには暴言を受ける社員たち。誰も残らなくなってしまうのは時間の問題のように思えました。
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創業から7年間。「利益を出せば社員はついてきてくれるはず」と安東が踏ん張っている間にも、社員はどんどん辞めていったのです。
気づけば、残ったのは安東と創業メンバーの2人だけ。
「俺は経営者の器じゃないんだな……」
「社長には向いていないのではないだろうか?」
そう思うようになり、どんどん自信を失っていきました。
もともと、安東は一匹狼的なタイプではありませんでした。どちらかといえば「会社を大きくして、仲間とともに成功したい」と思うタイプ。しかし実際には、真逆の方向に進んでしまっていたのです。
中小企業の経営者は、大きく分ければ2パターンになるでしょう。「俺は1人でやっていく」という人と、「会社を大きくしようと思ったけど、うまくいかないから1人、もしくは少人数でやっている」という人。
安東はまさに後者でした。
とはいえ、数人でやっている分には、食べることには困りませんでした。それまでの積み重ねで、収益はそれなりに確保していました。
セミナー講師のご依頼もきます。コンサルティングのご依頼もいただきます。業績拡大のコンサルティングとしては大きな信頼をいただいていたため、社員がいなくなった後も仕事は絶えなかったのです。
しかし、そうやって多くのご依頼をいただく状態の中でも、安東は「今後、どうすればいいんだろう……」と模索し続けていました。
「会社を辞めてどこかに勤めようか」
「誰かのナンバー2が向いているのだろうか」
「会社をたたんだ方がいいのだろうか」
何度も何度も、考えました。
いくら食べるのに困らないとしても、このまま一生、こんな状態で、ただ金を稼ぐためだけに仕事をするというのは、自分にとっては楽しい人生プランではない。
それだけは分かっていました。