今回のテーマは「社員の目標設定、経営者はどこまで介入する?」です。
先日、ある経営者の方から「目標設定」に関するご相談をいただきました。弊社の人事評価制度を参考に、半期ごとの目標を社員自身に立ててもらうようにしたところ、一部から反発が生じているのだそうです。
「立ててきた目標を修正すると『それはもう僕の目標ではありません』と、やらされ感満載になってしまうのです。前向きに取り組んでほしいからこそ、自分で目標を立ててもらいたいのですが、間違った目標をそのままにもできません。どうしたら社員のやる気をそがずに目標設定ができるでしょうか」
まずは、ご相談ありがとうございます。社員の立てた目標に修正が必要な場合、経営者はどのように介入したものか悩んでしまいますよね。
「自分で目標を立てる」とはいっても、給与の生じる業務の一環として取り組むからには、やはり会社の成長に寄与する目標を設定してもらわなければなりません。しかし、ご相談者様も懸念されるように、介入の方法を誤ると社員のモチベーションを削いでしまうのも事実です。
そこで今回は、目標を立てることの意味や、社員の目標設定に対する経営者の適切な介入方法について考えていきます。
まずは、改めて「目標設定の重要性」について考えてみましょう。
会社の一員として目標を立てるとは、「組織やチームが目指す成果を個人に落とし込み、達成するためのプロセスを考える」ということです。敢えてストレートに表現するなら、個人の目標設定と達成が、会社の業績アップにつながっているということですね。
たとえば、社員が適切な目標を設定し、1時間あたりの生産性を1%改善できるとどうなるでしょうか。1%というとわずかな変化に見えますが、1週間、ひと月と積み重ねていけば、組織に与えるプラスの効果は大きなものとなります。
もし、社員全員が時間あたり1%の改善に成功すれば、それだけで人員を1人増やすのと同じくらい生産性を高められることも。このように考えると、適切な目標設定が組織にとっていかに価値があるかをイメージしやすくなるかと思います。
ただし、正しい目標の設定にはある種の技術が求められます。その技術とは、【自分に求められる成果を正しく認識するとともに、そこから逆算して達成プロセスを考える力】のことです。
ズレた目標が出てくるのは、上記のような技術がまだ身についていないから。このとき、経営者が「この目標ではダメだ」と断じたり、「これを達成しなさい」と目標を押し付けたりするのは考えものです。
一方的なジャッジや目標の押し付けは、社員のモチベーション低下や会社への不信を招くばかりか、ひどい場合は離職に繋がってしまうことも。これでは、社員本人はもちろん、会社にとっても全くメリットがありません。
ですから経営者は、「社員自身が」適切な目標を立てられるようサポートする必要があるのです。目標設定を「人材の育成」と捉え、成長支援を目的とした介入を行うことが、組織の成長につながるということですね。
そして、目標設定をサポートするときは「段階的なトレーニング」の意識をもつことが大切です。
はじめから100点の結果を目指すと、社員の挫折や反発を招きやすくなり、教育はかえって遠回りになってしまいます。まずは30点程度の精度で目標を設定できることを目指し、「できた」という達成感も味わってもらいながら少しずつステップアップしていきましょう。
それでも、今回のご相談のように「介入されたくない」と反発を示す社員も出てくるかも知れません。この場合も、修正理由の説明や納得できない部分についての話し合いを挟みながら、少しずつ「上長や経営者とすり合わせながらの目標設定」に馴染んでもらうのが得策です。
トレーニングに必要な期間には個人差もありますが、不慣れな人でも概ね2~3年で目標設定に対する考え方や行動習慣が身についていきます。すると、会社に貢献している実感も得やすくなり、働き方が生き生きとしてくる。これもまた、社員自ら目標を立てることの大きな意義だといえますね。
社員が立てた目標は、その人が物事を達成するためにどんな思考を巡らせ、どのような姿勢で取り組んでいるかを表すひとつの指標です。そして、最初から正しい目標設定ができる人はそう多くありません。だからこそ、人材育成の認識をもって少しずつトレーニングを行うことが大切なのです。
根気のいる施策ではありますが、焦らず長期的な視点をもって取り組んでみてください。社員が自ら生き生きと成果にコミットする会社に向けて、ぜひチャレンジしていただければと思います。