今回のテーマは「会社の成長には“横”と“縦”がある」です。先日クライアントの経営者の方から「会社経営をしていると“お客さまからのクレーム対応”“社員どうしのいざこざの対処”など、毎日の火消しに追われてしまいます。もちろん、うまく行っていると感じるときもあるのですが、うちの会社は本当にこの方向で合っているのかと定期的に不安になります。安東さんは、そのような時どうしていますか?」というご相談をいただきました。実は私も、常に不安と戦っています。今回は私なりの「会社がうまくいかない時期に知っておきたいポイント」についてお伝えしていきます。
私自身も、経営を続ける中で「なんでこんなにうまくいかないのだろう?」という瞬間が何度となく訪れます。新しいチャレンジをしている時期は、なおさらです。目指すビジョンがありながらも、本当にたどり着けるのだろうかと絶望することは、きっと皆さんにもあることでしょう。
しかし、不思議なことに、この苦しさは延々続くわけではありません。必ずスパーンとそこを抜ける瞬間があるのです。「会社がすごくうまくいっている時期」と「会社が苦しい時期」が繰り返し訪れる・・・。
これはいったいなぜなのでしょうか?
私は、会社の成長には「横」と「縦」の軸があると思っています。
「横」の成長とは、前進しているイメージです。「お客様が喜んでくれた」「これができるようになった」と大きな成長の実感がある時期ですね。
しかし、「縦」の成長はそれとは全く違います。視座がガラッと変わったり、今までとは全く違うステージに上ろうとしているなど、今までに見たことがない景色に向かって動いているときは、上に向かっている「上昇」の成長です。この時期はつらく、歯を食いしばって乗り越えていかなくてはなりません。
前進の時期は楽しいのですが、上昇の時期は非常に苦しいものです。しかし、どちらも確実に成長しているのです。
「前進していくための成長」と、「上昇していくための成長」。会社の成長にはこの2つがあると知っておくだけで、経営者としては気が楽になるのではないかなと思っています。
会社の成長には「横」と「縦」があるのだと、感覚で感じていた私ですが、やはりそれが間違っていないと確信できたのは、イチロー選手の引退会見がきっかけでした。
会見の一部を抜粋してご紹介します。
人より頑張るなんて事はとてもできないんですよね。あくまでも秤(はかり)は自分の中にある。それで自分なりに、その秤を使いながら、自分の限界を見ながら、ちょっと超えていくということを繰り返していく。そうするといつの日かこんな自分になっているんだっていう状態になって。だから少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないと思っているんですよね。一気に高みにいこうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それを続けられないと僕は考えているので。地道に進むしかない。進むだけではないですね、後退もしながら。ある時は後退しかしない時期もあると思うので。でも自分がやると決めたことを信じてやっていく。でも、それは正解とは限らないですよね。間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけれども。でもそうやって遠回りをすることでしか、本当の自分に出会えないというか。
この言葉は、非常に説得力があると思いませんか。
後退するのも、遠回りでさえも、本当になりたい自分や会社になるためのプロセスにおいて大切な要素なのですね。
ご相談いただいた方はまさに今、会社が「縦(上昇)」の成長の最中で苦しい・悔しい時期なのかもしれません。しかし、その経験によって「自分は何者で、どのような経営者になれるのか」と考えられるようになっていく。それこそが、経営者の歩むべき経営道なのではないかと思います。ぜひ、目指すビジョンにたどり着く成長プロセスを理解し、それを楽しんでみてはいかがでしょうか。きっと、経営者としても会社としても、大きく成長できるはずですよ。