今回のテーマは「組織化できないのはなぜ?」です。
先日クライアントから、「リーダーに組織化の力を身に着けてもらうためには、どのようなサポートをすればよいでしょうか」とご相談をいただきました。
「弊社営業部のリーダーは、プレイヤーとしての実力も周囲からの人望もピカイチの人材です。しかし、権限移譲や組織化に苦手意識があるようで……本人のやる気は十分にあるので何かサポートをしてあげたいのですが、具体的な手立てが思いつきません」
プレイヤーとしては一流だけれど、組織作りやマネジメントは苦手……実は、このようなお悩みは非常に多いものです。恐らくその原因は、「組織全体を俯瞰する力」がまだ身についていないことにあるのではないでしょうか。
そこで今回は、リーダーに「俯瞰する力」が求められる理由や、俯瞰する力を育てるための具体的な方法についてご紹介します。
前述のとおり、リーダーには会社全体を俯瞰する力が求められます。組織をマネジメントする、すなわち「最も高い成果を上げるために、誰にどんな役割を任せるか」という作戦を立てるためには、高い視点から組織を見渡し、各部の現状や一人ひとりの能力を把握する力が必要だということですね。
しかし、これまでプレイヤーとして現場を駆け回っていた人が、個人の努力だけで俯瞰力を獲得するのは難しいものです。かつて私も通った道ですが、「俯瞰しよう、一歩引いて全体を見渡そう」と意識するだけでは、いくら工夫してみてもなかなか結果が伴いませんでした。
では、リーダーの俯瞰力を育てるにはどうすればよいのでしょうか。私は、その答えは「環境を整える」ことにあると考えています。環境を整えるとは、詳しくいえば「組織の俯瞰を助けるツールを作り、それを運用する時間を確保する」ということです。
ここからは、俯瞰力を身に着けるための環境づくりについて、さらに具体的に解説していきます。
俯瞰力を育てるにあたり、ぜひ活用していただきたいツール。それが「リーダーMAP」です。
リーダーMAPとは、組織の中にどんな機能があり、その機能を誰が担っているのかを一枚の図に表したものです。「誰がどんな立ち位置で、何の役割をこなしているか」を表している、サッカーのフォーメーションボードのようなツールだと考えていただくと分かりやすいでしょう。
このリーダーMAPを使うと、組織の内部構造を視覚的に把握することができます。すると、「一人に業務が集中しているから、すぐに手放せるものから分散させよう」「この機能の動きが止まっているから、担当社員と一緒に原因を探そう」といった具合に、課題の発見と改善が行いやすくなるのです。
さらに、リーダーMAPには「MAPをチームメンバーに共有すれば、メンバーも戦略を分かりやすく認識できる」という利点もあります。このように日ごろからリーダーMAPに触れる習慣を作っておけば、やがてチームメンバーが成長してリーダーを担う際にも、よりスムーズに俯瞰の視点を獲得できるようになるでしょう。
まずは、現在の貴社にある機能とその担当者を、細かなものまですべてリーダーMAPに書き出してみてください。その上で組織化や権限移譲について考えると、何から取り組むべきかの道が少しずつ見えてくるはずです。
俯瞰力を育てるにあたってもう一つ大切なのは、「リーダーとしての時間」を物理的に確保することです。手が空いたときにやるのではなく、組織化やマネジメントについて考えるための時間をあらかじめ設けておくということですね。
権限移譲や組織化に苦手意識があるリーダーの多くは、プレイヤーとしての業務で手一杯になっているものです。故に、現場を離れてリーダーMAPを見つめていると、最初は違和感や落ち着かなさを覚えるかも知れません。
しかし、ぐっと堪えて習慣化すれば、必ず俯瞰する力が身についてきます。そうすれば次第に、リーダーMAPが手元にないときにも常に全体を考えた戦略立てができるようになっていくでしょう。
新たな課題を見つけ、最大の成果を求めて改善を重ねていく。組織化への取り組みは、常にこの繰り返しです。
まずは、組織の全容を書き出したリーダーMAPを作る。そして、定期的にMAPを運用する時間を設け、全体を俯瞰しながらの戦略づくりに専念できる環境を整える。
弊社でも組織化のためのさまざまな試行錯誤を行ってきましたが、その中でもこの2つの取り組みには、とりわけ確かな手ごたえを感じました。ぜひ皆さんにも、その効果を実感していただければと思います。