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今回は、書籍『ザ・マネジャー 人の力を最大化する組織をつくる』を、中小企業経営に活かす方法についてご紹介します。
著者は、世論調査やコンサルティングを行なう企業“ギャラップ社”の、会長兼CEOであるジム・クリフトンさん。本書では、組織の成功を左右する最大の要因を「マネジャーの質」と見て、「人の力を最大化する組織」を実現するためのポイントをさまざまな角度から解説しています。
ボリューム豊かな本書の中でも、私はとりわけ“若い世代の考え方”や“これからのマネジメント”を切り口とした部分に面白さを感じました。
そこで今回は、若い世代の価値観や、彼らが力を発揮するために必要なリーダーの心得を、本書の内容を抜粋しながらご紹介します。
若い世代の力を十分に活かすためには、まず彼らがビジネスに抱く価値観を正しく認識する必要があります。
著者は、「若い世代の多くはやる気に満ちているが、組織の古いマネジメントに人生をすり潰されている」と指摘しています。旧態依然とした組織の在り方が、若い世代の想いや価値観に噛み合っていないということですね。
本書では、ミレニアル世代(1980~1996年生まれ)やZ世代(1997年以降生まれ)の価値観を「いま職場で起きている6つの変化」として、次のように紹介しています。
1. ただ「給料」をもらうために働くのではなく「目的」を求めている
2. 仕事に「満足度」ではなく「成長」を求めている
3. 指揮統制型の「ボス」ではなく「コーチ」を求めている
4. 「年一回の評価」ではなく「継続的な会話」を求めている
5. 「弱み」だけではなく「強み」に注視してくれることを求めている
6. 仕事とは、単なる「仕事」ではなく「人生」そのものである
これらについて、もう少し具体的に掘り下げてみましょう。
若い世代は、給与や福利厚生の充実だけではなく、仕事によって人や社会の役に立つという「目的」や、仕事を通じて自らが「成長」することを重視します。ですから私たち経営者は、自社の存在目的をしっかり定義するとともに、若手が成長を実感できるような環境を構築する必要があるのです。
また、若い世代は、一人ひとりの「強み」に注目し、細やかにコミュニケーションを重ねつつ成長を支援してくれるような「コーチ」を求めています。なお、著者らの研究では「強みは飛躍的に伸びるが、弱みが強みに発展することはない」という結論が出ているとのこと。若い世代の考えは、的を射たものだと言えますね。
そして、若い世代は「この組織では自分の得意なことを毎日やれるか」「この組織は自分の貢献にきちんと感謝してくれるか」といった点に高い関心を持っています。プライベートさえ楽しければよいのではなく、仕事も「自分の人生」として充実させたいと考えているのですね。
こうした価値観からは、若い世代が仕事を「自分事」として捉えていることが分かります。彼らの力を活かせれば、仕事に深くコミットしてくれる心強い人材が育つのではないでしょうか。
次に、若い世代の力を活かすためのマネジメントについて考えてみましょう。本書では、成功するリーダーの特性に「いくつものチームをまとめ上げる」「優れた意思決定を行なう」の2点を挙げています。
まず、複数のチームをまとめるには、高い視座や連携力とともに「部下の成長を支援する力」が求められます。具体的には「部下の強みを知り、一緒に目標を設定する」「細かなフィードバックを行なう」「評価の根拠などについて、しっかり説明責任を果たす」といった、コーチングのスキルが必要となるでしょう。
また、部下の成長や組織の未来は、リーダーの意思決定に左右されます。正しい意思決定のためには、「自分の強みや弱み、限界値を知る」「データや証拠に基づいて判断する」といった、冷静に事実を把握する力が必要です。
部下に敬意を持って向き合い、一人ひとりの強みを活かすような働きかけをする。そして、感情や感覚ではなく、常に事実に基づいて考える。これからのリーダーには、このような資質が求められるということですね。
本書には目新しいアイデアこそ載っていませんが、その内容はとても示唆に富んでいます。私も実際に、読みながらさまざまなことに気づかされました。
若い社員とのギャップや、マネジメントの方向性に悩んでいる方はもちろん、「これから若い社員を増やしたい」と考えておられる方にも、きっと本書は役立つのではないでしょうか。
かつてのトップダウン型組織は鳴りを潜め、横の繋がりを大切にしながら個々の力を活かせるような組織が生き残る時代になりました。是非、本書をお読みになり、貴社のこれからを担う世代が活躍していくためのヒントにしていただければと思います。