YouTube
今回は、書籍「マネジメントの正念場 真実が企業を変える」を経営に活かす方法についてご紹介します。
著者は、幅広い顧客を持つコンサルタントのロバート・フリッツ(Robert Fritz)さんと、医療保険会社「ブルーシールド・オブ・カリフォルニア」のCEOであるブルース・ボダケン(Bruce Bodaken)さん。
そして、フリッツさんが顧客のボダケンさんとともに経営を変えていく中で用いたMMOT(The Managerial Moment Of Truth)というマネジメント手法について、詳しく説明しているのが本書です。
シンプルな構造でありながら、強力な効果をもたらすMMOT。今回は、本書の内容に基づき、MMOTの概要や実行のポイントをざっくりと解説します。
MMOTとは、簡単に言えば「マネジャーの正念場をうまく扱い、企業をより良い未来に導く方法」のことです。
実は、マネジャーは日常的にいくつもの「正念場」を迎えています。たとえば、納期の遅れが発生したとき、品質問題が起きたとき……このような場合にどう行動するかが、マネジャー自身や企業の今後を大きく左右するのです。
もし、マネジャーの正念場をうまく扱えれば、社員の力が引き出され、組織も健やかに成長していくでしょう。そして、そのために役立つ手法がMMOTなのです。
MMOTは、次のような4つのステップで構成されています。
①現実を認識する
②どのような状況でそうなったのかを分析する
③行動計画を作る
④フィードバックシステムを作る
それでは、各ステップについて詳しく見ていきましょう。
まず、ミスや問題を起こしてしまった当人と、事実確認を行います。
ここでは「事実だけを見つめ、個人の解釈を加えない」ことが重要です。たとえば、納期の遅れが生じたときは「期日に対して何日遅れているか」だけが「事実」であり、怒りや言い訳といった「個人の解釈」はすべて不要なのです。
そのためには、チームメンバーに「嘘偽りのない真実を伝えることこそが安全である」と理解してもらう必要があります。よって、マネジャーは怒ったり、部下を責めたりせず、冷静に事実だけを確認するよう努めなければなりません。
次に、どのような状況で問題が起きたのかを分析します。
ここで大切なのは、「どんなスケジュールのもとで、どんな思考・行動のプロセスを踏んだのか」を把握することです。そのためには、次のような点を意識して話し合うとよいでしょう。
・どんな想定や思い込みがあったか、それは正しかったか
・どんな計画を立て、どう実行したか
・何が起こり、どんな決断をしたのか
・その決断の結果、何が起きたか
なお、このステップは、部下の言い訳を聞いたり、失敗を責めたりする場ではありません。また、問題を解決するための場でもないことに留意してください。
ステップ2の目的は、「どんな意思決定によって仕事をし、その結果何が起きたか」を明確に理解することにあります。その因果関係を認識できれば、自ずと「どうすれば同じ問題が起きないか」が見えてくるでしょう。
ステップ3では、行動計画を立てます。ステップ1・2で確認した事実を踏まえ、同じ問題を起こさないためにどう行動すればよいかを考えるということですね。
ここでのポイントは、「部下の問題解決を肩代わりしない」「行動計画は、部下本人が書き留める」の二点です。
マネジャーが先回りして解決策を示すと、部下の問題解決力を奪うことになりかねません。マネジャーは部下をサポートし、「本当に成果が上がるプロセスができたかどうか見届ける」仕事に徹しましょう。
また、行動計画を書き留めることで、部下は話し合いを振り返って確認できるようになります。そして、マネジャーは部下の理解度を確認し、もし的外れな点があれば修正の支援を行うことが可能になるのです。
最後に、フィードバック(FB)のシステムを構築します。行動計画の実行中に、リアルタイムで調整・支援ができるような仕組みを整えるということですね。
たとえば、「次の仕事のスケジュールをプランニングして、週明けに持ってきてもらえるかな」といった具合に、計画の進捗状況を確認し、必要なサポートを提供するための場を設けることが、FBシステムの構築にあたります。
はじめのうちは細かな間隔でFBを行い、うまくできるようになるに従ってスパンを長くしていくとよいでしょう。
MMOTは、およそあらゆる社内トラブルの解決に活用できる手法です。
これほど合理的で、人間関係にも傷をつけないマネジメント法は他に類を見ません。もしMMOTを全社的に実行できれば、きっと会社の未来が大きく好転するのではないでしょうか。
今回ご説明した内容は、あくまでも本書の簡易的な要約に過ぎません。ぜひとも本書を熟読いただき、健やかに成長する組織を実現するための力にしていただければと思います。