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今回のテーマは「社員教育が上手くいく会社、上手くいかない会社の違い」です。
先日、社員教育についてご相談をいただきました。「定期的に技術指導を行っているのですが、今一つ効果が感じられません。社員も受け身でこちらの意図が伝わっているのか分からず、これでよいのか次第に不安になり、勉強会の頻度も下がってきました。安東さんは、社員教育として何を提供していくのが正解だと思いますか」というお話です。
教育は、中小企業にとって重要なテーマの一つですね。しかし、ご相談のように「どうすればよいか分からない」「工夫しても手応えがない」と悩んでいる経営者は少なくありません。
私も試行錯誤を重ねる中で、社員教育に成功する会社とそうでない会社の違いが見えてきました。そこで今回は、社員教育が上手くいく会社の特徴や、社員に提供するべき教育のポイントについてお話しします。
教育に難航している会社は、多くの場合「人」に焦点を当てた教育を行っています。この社員は報連相が足りない、あの社員は同じミスを繰り返す……と、特定の人物の課題に着目し、それを解決するための研修や教育を行っているということですね。しかし、個人を変えるための教育にいくら力を割いても、組織全体の成長にはなかなか繋がりません。
一方、教育に成功している会社は「チーム」のレベル上げにフォーカスしています。一人ひとりを変えようとするのではなく、全員が力を活かしながら成長できるような環境づくり=チームビルディングに注力しているということです。
たとえば、報連相が足りない社員がいるときは、「報連相のレベルを上げる」を会社目標として掲げ、その目標に向かってチームで試行錯誤してもらう。すると、個人の得意不得意はあるにせよ、チーム全体のレベルが底上げされていく。これが、教育に成功している会社の思考法なのです。
チームビルディングによって全体のレベルを上げるためには、まず社員の「成長を目指す意思」が団結していなければなりません。そして、そのために役立つのが道徳教育です。
企業における道徳教育とは、会社の理念やビジョン、コア・バリューを社員に共有し、会社の価値観や行動指針を浸透させるための教育を言います。これを徹底することで、社内の皆が同じ方向を向き、目標に向けて団結できるようになるのです。
さらに、道徳教育の徹底にはもう一つメリットがあります。それをお伝えするために、以前弊社のYoutubeでも取り上げた書籍『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』の一部をご紹介します。
書籍『GIVE&TAKE』では、世の中にはGIVER(ギバー)、TAKER(テイカー)、MATCHER(マッチャー)の3種類の人がいると述べられています。
ギバーは人に与えることに幸せを感じ、テイカーは人から奪うことを喜びとしています。そして、損得のバランスを考え、与えられれば与え返し、奪われたら奪い返すのがマッチャーです。
テイカーの割合が多い会社は、社員がお互いに奪い合い、足を引っ張り合う殺伐とした組織になってしまいます。反対に、会社にギバーばかりを集められれば、社員が互いに与え合い、互いを成長させ合う前向きな組織を作れるでしょう。そして、そんな理想的な環境を作るためのカギが道徳教育なのです。
道徳教育を行うということは、事業によって人や社会によい影響を与える方法や、そのために必要となる思考や行動を追求するということです。これを徹底すると、与えるよりも奪うことが好きなテイカーにとって居心地の悪い社内環境ができるため、やがて彼らは自ら会社を去っていくことになります。
すると、会社には与えることが好きなギバーと、与えられれば与え返すマッチャーだけが残ります。これを実現できれば、社員が互いに与え合いながら気持ちよく過ごせる環境が成り立ち、生産性や成長を損ねる社内トラブルがなくなっていくのです。
こうした環境を作れれば、社員たちは目標に向かってしっかりと団結できるようになります。やがては、個々の得意・不得意を内包しつつも各々が長所を活かし合い、互いに助け合いながらチーム全体のレベルを上げていけるような、強さと柔軟性を併せ持つ組織が実現するでしょう。
ご相談者の方が取り組まれている技術教育もまた、会社にとって欠かせないものです。そこにチームビルディングの視点を加え、学びと成長を継続できる環境を支えるための道徳教育を行えば、きっと技術教育の成果もめきめきと上がってくるのではないでしょうか。
個人ではなく、チーム全体にフォーカスすること。そして、道徳教育によってチームが団結できるような環境を作ること。ぜひこの2点を念頭に、改めて教育についてじっくりと考えてみていただければと思います。