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今回は書籍「米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方」を中小企業の経営に活かす方法についてご紹介します。
著者は元海軍大佐のL・デビッド・マルケ氏。アメリカ海軍兵学校を首席で卒業し、1999年から2001年まで、攻撃型原子力潜水艦サンタフェの艦長を務めた方です。海軍を引退してからは、リーダーシップのコンサルタントとして国内で幅広く活躍されています。
本書では、アメリカ海軍でダメな艦として有名だった「潜水艦サンタフェ」を、誰もが注目する最も優れた艦に生まれ変わらせたマルケ船長の手腕から、組織づくりのヒントが学べます。部下に自主性を持って取り組んでほしいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
マルケ船長が就任した当初、潜水艦サンタフェには134名の乗員がいました。しかしその乗員たちは「言われたことをやるだけ」という雰囲気で、働くことに疲れていたといいます。
そこでマルケ船長は、部下に命じるトップダウンのリーダーシップから「部下へ委ねるリーダーシップ」へとシフトするために改革を実行しました。部下に自主性を発揮させるためです。
本書には、その改革の6つのポイントが記されています。
①組織のメンバーを信頼し、頼ってみる
②ミスを避けるだけの組織は失敗する
③責任班長という仕組みの導入
④組織文化を変える2つの方法(自分の考え方を変える、自分の態度を変える)
⑤部下の自発性を高める言葉遣い
⑥当事者意識を押し付けない
上記の内容を、一部ご紹介しましょう。
マルケ船長がまず実行したのは「艦内の装置一つひとつを技術的に把握すること」でした。そしてそれは自分で学ぶのではなく、現場の乗員を信頼して、彼らに詳細を教えてもらったのです。
マルケ船長は「彼らなしでは任務が遂行できない」というくらいの気持ちで乗員に頼り、艦内のありとあらゆる面を技術的に理解したあとも、その関係性を変えませんでした。そして船員と会話をする時はできるだけ興味を持って話すことで、部下との信頼関係を構築していったのです。
もともと潜水艦には「決断を下す者まで情報を上げていく仕組み」が確立されていましたが、マルケ船長は「決断を下す者が情報のある場所へ降りていく仕組み」に変えることにしました。
そこで導入したのが「責任班長」です。船内の役割と責任を明確にして、任命した範囲において自主性を発揮してもらうのが狙いになります。それまでの仕組みだと責任者は情報が上がってくるのを待っているだけでした。しかし責任班長に班員の管理を一任することで、責任者自らが情報の元へと自主的に動くようになったのです。
部下の「当事者意識の欠如」を嘆く責任者は多いと思いますが、この苛立ちを部下にぶつけても事態が悪化するだけです。いくら言葉で「当事者意識を持て」と諭したところで、そう簡単にはいかないでしょう。
大切なのは、当事者であるという自覚を促すための取り組みです。当事者意識のない人は、基本的に「何のためにやるのか」を理解しておらず、自分事として捉えられていません。ですから当事者意識がないことを責めるのではなく「何のためにやるのか、それによってどのような価値が生まれるのか」を伝えるのが大切なのです。
今回ご紹介した内容以外にも、部下の言葉遣いを「自分に権限がある言い方」に変えさせるなど、さまざまなポイントが記されています。
本書を読めば読むほど、経営学の書籍などで紹介されている部下に自主性を発揮させる取り組みを、軍隊で愚直に実行していった様子が感じ取れるはずです。「うちの会社では無理だ」とは思わず、ぜひ本書を手に取って、自主性のある組織づくりのヒントにしてみてください。