YouTube
今回のテーマは「会社の業績を社員にどこまで公開するか?」です。
クライアントの方より「オープンブック・マネジメントの重要性をよく耳にします。ただ会社の数字を共有することで社員に過度なプレッシャーを与えたり、あらぬ誤解を招いたりしないかと不安です」というご相談をいただきました。
中小企業の経営者にとって、会社の業績をすべて社員に共有するのはハードルが高いことですよね。お気持ちはよく分かります。しかしオープンブック・マネジメントは、社内に一体感を持たせるために欠かせない取り組みです。私個人の考え方にはなりますが、その理由をお話していきましょう。
オープンブック・マネジメントについては、YouTubeやブログでもご紹介してきました。自主性のある組織にするために、経営者と社員の情報格差をなくそうという取り組みです。
しかし、それが「数字へのこだわり」や「無言のプレッシャー」だと社員に捉えられるのでは?と不安を抱く経営者も、少なからずいらっしゃるようです。かく言う私も、以前はそのことを恐れて数字公開に二の足を踏んでいました。
数字を経営者だけが背負うことで、確かに社員は不安を感じずにのびのびと働いてくれました。しかし、数年続けるうちに私自身が苦しくなってきたのです。その理由が「孤独」です。売上が落ちて危機感を感じても、社員はいまひとつピンとこない。協力的な社員がいても、数字の詳細を知らないためにピントが外れた施策を出してくる。結局、私だけがすべてを背負い、ひとりで必死になっているような感覚に陥ってしまったのです。
そのような時に出会ったのが、書籍「オープンブック・マネジメント」でした。これを読んで改めて確信したのは「私自身がつくりたい会社とは『仲良しグループ』ではなく、社員全員でひとつの目標に向かって団結できる会社だ」ということです。
そのためには、社員の数字意識が不可欠なことを思い出させてくれました。社長ひとりが数字を追い求めても、社員との温度差が生まれるだけ。同じものを見て同じ目標を追いかけるには、覚悟を決めて情報共有すべきだと覚悟を決めました。
私の場合いきなり全社員にすべてを公開したわけではなく、一部のリーダーメンバーに対して数字を共有しました。入社間もない新人にまで公開するのは、さすがにリスクがあると判断したためです。
リーダーたちに共有した内容は、個別の給与額以外すべてです。初めはピンとこなかったようですが、部門ごとに責任者を決めて任せていくと、少しずつ数字意識が芽生えてきました。そうすると効果的な施策が考えられて、PDCAも回りやすくなります。そして同じ情報を共有しているからこそ、経営者と社員が共に一喜一憂できるようになったのです。
数字を共有するのは、できていない現状を責めて追い込むためではありません。経営計画を実現させて、それを全員で喜ぶためです。つまり、会社の未来を一緒につくっていく「団結」が目的になります。そのことを丁寧に説明した上で数字を共有すれば、誤解も最小限に抑えられるはずです。
社内のあらゆる数字を共有するのは、勇気がいることかもしれません。しかし経営者ひとりで抱え込んでいても、社員との温度差が広がるばかりです。これでは社員の自主性が育たないばかりか、経営者自身を孤独へと追い込んでしまうでしょう。
オープンブック・マネジメントは、ひとつの目標に向かって一丸となり、達成の喜びを全員で分かち合うために必要不可欠な取り組みです。社内の団結のためだと覚悟を決めて、ぜひチャレンジしてみてください。