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今回のテーマは、「引退したはずの会長が社員に指示出し!?」です。
先日、会社を引き継いで1年目という経営者の方から、先代である会長との関係についてご相談をいただきました。「ベテラン社員が、私の経営方針について会長に相談しているようです。ときには、会長が私の方針と真逆の指示を出し、社内が混乱してしまうことも…どうしたらよいのでしょうか」という内容です。
これは由々しき問題ですね。ご相談くださったニ代目の社長はもちろん、会長にとっても、何より社員の皆さんにとっても、つらい状況なのではないでしょうか。
そこで今回は、会長と社長の関係が悪化してしまう原因や、問題解決に役立つヒントをお伝えします。ぜひご一緒に現状を改善し、より健やかな関係性を築いていきましょう。
ご相談のように、社長と会長の関係がうまくいかない問題には、大きく分けて二つの原因が考えられます。
まず一つめは、会長が会社や社員のために、良かれと思って独断で行動しているケースです。また、その背景には「経営は新社長に引き継いだものの、まだまだ仕事への意欲や関心をもて余している」「社員から頼られることに喜びがある」といった心理が隠れていることも。
この場合は、会長の心象に配慮しつつ、社長との役割分担を明確にすることで状況を改善できる可能性があります。
たとえば、「社員からの相談は、その都度社長にも共有してもらう」「経営方針に関わる質問や相談は、回答を避けて社長に繋いでもらう」といった具合です。このように、会長に対応してもらう範囲や社長との連携方法をあらかじめ決めておけば、社内に混乱が生じるのを未然に防げます。
二つの原因のうちもう一つは、代替わりをきっかけに社長が会長をブロックしてしまい、会長が社員に接触せざるを得なくなっているケースです。社長が会長を「引退した身」と捉え、報告や相談、情報共有の一切を断ってしまうために、会長からは経営状況が見えなくなっている状態ですね。
社長は「会社を引き継いだからには、すべて自分の裁量で経営すべき」と考えているかも知れません。しかし、そもそも先代が「会長」という役職で会社に残っているのは、新人社長の経営を見守り、万一のときにはバックアップしようという思いがあるからではないでしょうか。
それにも関わらず経営をブラックボックス化されてしまうと、会長は不安や不信感を覚え、社員の話を聞いて動向を探ったり、独断で指示を出すことで軌道修正を試みたりするようになるのです。私はこれまでに、このような経緯で会長と社長の関係がこじれてしまうケースを多く目にしてきました。
この場合は、社長側が「会長=引退」という認識を改めるとともに、同じ経営チームの仲間として会長と連携することが解決の糸口となるでしょう。具体的には、定期的に役員会を開いて経営状況を共有するとともに、必要に応じて意思決定の合意をとることをおすすめします。
今回のご相談では、「ベテラン社員が、経営方針について会長に相談している」とのことでした。このような場合は、疑問や不安を会長ではなく社長本人に話してもらえるよう、社員との信頼関係づくりにも注力する必要があります。
まずは、社長と会長の役割の違いについて社内に周知します。そして、ネガティブな反応を見せる社員と一対一で向き合い、どのような点に不満を抱えているのかをじっくり聞き取る機会を作ってみましょう。
不満があると分かっている状況で社員と膝を突き合わせるのは、社長にとって恐怖を伴うかも知れません。しかし、社長が直接社員の意見を受け止め、問題を解決しようとする姿勢を見せることは、社員と信頼関係を築くための大きな助けになるはずです。
会社という船の舵を取るのが社長ならば、より俯瞰的な視点から航海を見守ってくれる存在が会長です。これを念頭に役割を分担し、進捗状況をしっかりと共有すれば、会長はきっと心強いサポーターになってくれるでしょう。
まずは、会長との関係や連携の方法を見直してみること。そして、不満や疑問を直接伝えてもらえるよう、社員との信頼関係づくりにも心を砕くこと。道のりは楽ではないかも知れませんが、会社の健やかな成長のために、是非、挑戦していただければと思います。