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今回のテーマは「大企業出身!役職付き!…なのに、中小企業で活躍できない?」です。
先日、ある経営者から採用関係のお悩みを伺いました。「大企業で部長をしていた方を雇いました。役職経験のある人材ということで大いに期待していたのですが、思ったような働き方ではなく…。採用の難しさを痛感しています」という内容です。
人を見極めるのは、本当に難しいですね。人手不足によって採用活動そのものが年々厳しくなっている現状もあり、「大企業や一流企業の出身と聞くと、それだけで雇いたくなってしまう」という中小企業は少なくありません。
しかし、ご相談内容のようなミスマッチを防ぐためには、肩書きに惑わされない丁寧な採用活動が大切です。そこで今回は、大企業と中小企業で求められるスキルの違いや、本当に活躍してくれる人材の見極め方についてお伝えしていきます。
大企業と中小企業では、仕事に求められるスキルの方向性が違います。その理由は、企業としての成熟度が異なるからです。
まず、大企業は長い歴史や独自のノウハウを有していることが多く、企業として成熟しています。大勢いる社員の誰もがある程度の成果を上げられるよう、社内環境が整備されているケースや、業務が仕組み化されているケースが多いということですね。
このような環境下で成果を上げるためには、自分の役割を逸脱せず忠実に仕事をこなす力や、周囲の人との繋がりを築く力が求められます。飲み会やゴルフなどの付き合いを大切にする、上司への社内接待を行なうといった”出世の技”も、大企業だからこそ役立つスキルだと言えるでしょう。
これに対し、中小企業は企業としてまだまだ発展途上である場合がほとんどです。
社員数も少なく、業務の仕組み化もされていない会社が多いため、毎日のように新しいことに挑戦する必要があるのです。
こうした環境で結果を出すには、常に自ら考えて前進する力が求められます。型に沿って仕事をこなす技術ではなく、どんどん道を切り拓いていくための技術が必要だということですね。これが、大企業と中小企業に求められるスキルの違いです。
もちろん、求められるものが違うからといって「大企業出身者は、絶対に中小企業では活躍できない」というわけではありません。しかし、出身企業や役職経験の有無にばかり気を取られてしまうと、採用後に「こんなはずでは…」と後悔することも。
採用活動の際は、その人が中小企業でも活躍できる力を持った人材かどうかを見極めるよう意識するとよいでしょう。
真に活躍してくれる人材を採用するには、どうすればよいのでしょうか。私は、面接の際に「過去」に着目することをおすすめします。
注目すべきは、その人がこれまでの人生において何を重視し、どんなことを考えて生きてきたかです。高校を、大学を、前職があるなら前職を選んだ理由は何か。そこで何に熱中し、どのように力を発揮したのか。そして、前職を退職した理由は何なのか…ぜひ、このような部分にスポットライトを当ててみてください。
当然のことですが、面接を受けに来る人はみな、好印象を持たれようと努力しています。過去の経歴に関しても、出した成果や経験した役職といった要素をPRしようとする人が多いでしょう。しかし、「こんな成果を出しました」というアピールには、往々にして自己解釈が混ざっているものです。
表層の印象に惑わされないためには、「その成果は、どのようなチーム構成で出したものですか」「あなたは、チームの中のどのような立ち位置で活躍したのですか」といった、過去を深掘りするような質問が役に立つでしょう。曖昧な要素を排して事実のみに焦点を当てる、リスクヘッジスタイルの面接を行なうということですね。
このように、徹底して過去に着目していくと、その人の真実を見極められる可能性が高まります。
人を見極めるのは、簡単なことではありません。採用活動がなかなか上手くいかないときは、より冷静な目を持った社員に協力を求める、バックチェック(その人が以前勤めていた職場に連絡をとり、人となりや職務遂行能力について確認すること)を行なうといった工夫を取り入れるのも手です。
まずは、大企業と中小企業の違いを知ること。そして、面接に訪れた人の本質を見極められるよう、さまざまな工夫を凝らすこと。このような取り組みを進めれば、きっとみなさんの会社にとって本当に必要な人材を雇用できるでしょう。
私もまだまだ、人を見極めるための目を養っている最中です。みなさんもぜひ、本気の採用活動にチャレンジしてみませんか。